研究実績の概要 |
本年度はCeイオンを含むLa-Co系の複核金属シアノ錯体からのペロブスカイト型複合金属酸化物の調製を行い,令和4年度に検討したCeイオンを含むLa-Fe系の金属シアノ錯体からの酸化物調製との比較から,以下の①~③に関する知見を得た.①原料La1-xCex[B(CN)6] (B = Fe, Co)前駆体(0 ≦ x ≦ 0.3)を500~900 ℃で焼成したFe系試料ではLaFeO3由来 (600~900 ℃), Co系試料ではLaCoO3由来 (700~900 ℃)のXRDパターンが確認できた.Fe系試料ではCeイオン添加量の増加と共に各ピークがシフトしたが,Co系試料ではピークシフトが観測されなかった.この結果から,前駆体からペロブスカイトへ構造変化する際にLaFeO3骨格に比べてLaCoO3骨格にはCeイオンは取り込まれにくいことがわかった.②Co系試料ではFe系試料よりもCeイオンの固溶限界が低く, x≧0.1でペロブスカイト構造由来のピークの他にCeO2に帰属されるXRDパターンが観測された.③x=0.3に固定したLa0.7Ce0.3[B(CN)6] (B = Fe, Co)前駆体を900℃で焼成した試料の水素による昇温還元測定を行った.Fe系試料では700℃以下にFe3+, Ce4+の還元ピークが確認できたが,Co系試料ではCo3+の還元のみで,Ce4+の還元は観測されなかった. 共同研究先の東北大学のグループに焼成時のFe系試料中のCeイオンの価数変化についてX線吸収微細構造測定を依頼したところ,金属シアノ錯体ではCe3+,室温から焼成温度300 ℃程度のアモルファス状態ではCe4+、そしてペロブスカイト型酸化物ではCe3+およびCe4+の混合状態であることがわかった.
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