研究実績の概要 |
2022年度では貴金属元素とMgOの相互作用の起源を調べるために、第5,6周期の5種類の元素(Ru,Rh,Pd,Ir,Pt)のナノ粒子とMgOを混合し、エックス線吸収スペクトルによって微細構造を調べた。その結果、これらを焼成すると固溶体を析出したのちに、900~1000℃の再析出するという現象が共通して起こることを見出した。一方、AgおよびAuとMgOを混合物を熱処理しても固溶体は生成しなかった。固溶体を生成した元素の価数は2または3価であり、これらのカチオンはMg2+と近いイオン半径を有してたことから、MgO中のMg2+とカチオンが交換することで固溶したことが明らかになった。Pd-MgO固溶体によってベンジルアルコール-アニリン反応をおこなったところ、ベンジリデンアニリンが選択的に生成した。活性は反応器中の空気の体積によって大きく変化したことから、Pdの一部がPdOに酸化され、金属PdとPdOが共存した触媒がベンジルアルコールからベンズアルデヒドへの酸化を促進し、生成したベンズアルデヒドとアニリンが反応したことでベンジリデンアニリンが選択的に生成したことを推察した。一方、Ru-MgOを触媒としてアンモニアの分解反応をおこなったところ、活性は焼成温度によって変化し、900℃で熱処理した試料がもっとも高い活性を示した。これは、900℃で焼成することでよく分散したRuがMgOの表面に析出したためであると考えられる。また、Pt-MgO固溶体がヒドロシリル化反応に高い活性を示すことを見出した。水素によって処理したPt-MgO固溶体触媒が高い活性を示したため、金属PtとPt4+が反応に関与しているという可能性が考えられる。
|