研究課題/領域番号 |
22K04838
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
岩崎 雄吾 中部大学, 応用生物学部, 教授 (50273214)
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研究分担者 |
ダムナニョヴィッチ ヤスミナ 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (00754673)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 融合タンパク / プラズマローゲン |
研究実績の概要 |
微生物およびヒトPEDSのN末端側にMBPを、C末端側にApoAIを付加した発現プラスミドを構築し、融合タンパク質として大腸菌で発現を試みた。微生物PEDSは低温での発現誘導により細胞内に可溶性タンパクとして発現し、細胞破砕液の遠心分離上清から回収することができた。さらに回収した微生物PEDSをニッケルNTAアガロースにより精製できた。精製したPEDSのCDスペクトル測定の結果、本タンパクは一定の立体構造をとっていることが予想された。 一方、ヒトPEDSのMBP-ApoAIとの融合タンパクは可溶性はおろか、不溶性タンパク質としても発現しなかった。抗MBP抗体を用いたウエスタンブロットの解析から、このヒトPEDS融合タンパクはN末端に付加したMBPまでは翻訳されるが、PEDS部分の途中で翻訳が停止していることが予想された。ヒトPEDSはそのN末部分が微生物PEDSと比較して長い。そこで、ヒトPEDSのN末端27アミノ酸残基を微生物PEDSの9アミノ酸残基に置き換えたキメラ遺伝子を作成し、前述のMBP/ApoAIとの融合フォーマットで発現させたところ、可溶性タンパクとして発現させることに成功した。 可溶性タンパクとして発現させた微生物およびヒトPEDSを用いて、プラスマローゲン合成を試みた。本酵素は電子伝達体としてシトクロムB5(Cb5)と同還元酵素(B5R)を必要とする。別途可溶性タンパクとして発現調製したCb5とB5Rの存在下、有機合成したアルキルアシルリン脂質を基質として酵素反応をおこなったが、プラズマローゲンの合成は確認できなかった。 さらにPEDS融合タンパクのN末端部分に付加したMBPをCb5と置き換えた発現プラスミドを新たに構築し、可溶性タンパクとして発現させることに成功したが、この酵素の活性も検出することはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
微生物PEDS、ヒトPEDSともに可溶性タンパク質として大腸菌で発現させることに成功した。特にヒトPEDSに関しては微生物PEDSのN末端配列のグラフティングにより可溶性化に成功した。これは一定の成果である。しかしながら、本課題の最終目的であるプラスマローゲンの合成に関しては、調製した酵素に活性が検出されなかったため、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
PEDSは酵素本体には非ヘム型の鉄、外部因子としてヘム鉄を含有するCb5を必要とする。次年度はプラズマローゲン合成(不飽和化反応)に必要な因子に見落としがないかを改めて確認するため、in vivo でのプラズマローゲン合成を行う。微生物PEDSをそのまま大腸菌で発現させた場合、大腸菌の膜画分に回収されることを確認している。そこで、PEDS, Cb5, B5Rを共発現させた大腸菌菌体に蛍光標識したアルキルアシルリン脂質を取り込ませて反応後、脂質を抽出してプラズマローゲンに変換されるかを検出する。蛍光標識型リン脂質はアルキル鎖部分に蛍光色素を結合させたもので、代表者が独自に設計・合成したものである。
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題の採択内定後に所属機関を異動したため、新研究室の立ち上げに必要な冷蔵庫や遠心機などの基本的な機器類を揃える必要があった。しかし、おりからの半導体不足の影響で電気製品の納品が大幅に遅れ、結果として冷蔵保管の試薬類などの購入計画にも遅れが生じ、若干の次年度使用額が生じた。 新年度はこの残額と合わせ、適正に予算を執行する計画である。
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