研究課題/領域番号 |
22K04843
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
吉原 明秀 香川大学, 農学部, 准教授 (40548765)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | トランスケトラーゼ / アルドペントース / ケトヘプトース / D-タガトース3‐エピメラーゼ |
研究実績の概要 |
七炭糖は天然に D-セドヘプツロースと D-マンノヘプツロースの2種類が確認されてい るが、その他の七炭糖は存在すら確認されていない未知な物質である。本研究ではThermus thermophilus HB8 由来組換えトランスケトラーゼに着目し酵素学的な諸性質を検討した。その結果、本酵素はアルドヘキソースから七炭糖を生産できることを見出し、ヒドロキシピルビン酸リチウムとアルドヘキソースから七炭糖の生産を行った。 アクセプター基質にアルドペントースを用いた際には D-リボース、L-アラビノース、D-キシロース、L-リキソースに強い反応性が見られ、それぞれの転換率は 41%、26%、24%、43%であった。それぞれの生産物はHPLCを用いて分離精製し、LC/MS 、13C-NMR、比旋光度測定を行った。その結果、D-リボースを基質に生産された物質は D-セドヘプツロースで、L-アラビノースを基質に生産された物質は L-グルコヘプツロースで、D-キシロースを基質に生産された物質は D-イドヘプツロースで、L-リキソースを基質に生産された物質は L-ガラクトヘプツロースであることを同定できた。生産した 4 種類のケトヘプトースを基質に Pseudomonas chicorii ST24 由来 D-タガトース3-エピメラーゼによる酵素反応を行った。その結果、四種類すべて基質のエピ化反応を触媒していることが明らかとなった。それぞれの生産物はHPLCを用いて分離精製し、LC/MS 、13C-NMR、比旋光度測定を行った。その結果、D-セドヘプツロースのエピ化によって得られた生産物は D-アロヘプツロースで、D-イドヘプツロースのエピ化によって得られた生産物は D-グロヘプツロースで、L-ガラクトヘプツロースのエピ化によって得られた生産物は L-タロヘプツロースであると同定できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
微生物由来のトランスケトラーゼを検討した結果、thermophilus HB8 由来組換えトランスケトラーゼが耐熱性が高く、 D-リボース、L-アラビノース、D-キシロース、L-リキソースに強い反応性が見られることが明らかにでき、D-リボースを基質に生産された物質は D-セドヘプツロース、L-アラビノースを基質に生産された物質は L-グルコヘプツロース、D-キシロースを基質に生産された物質は D-イドヘプツロース、L-リキソースを基質に生産された物質は L-ガラクトヘプツロースであることを同定できた。また、Pseudomonas chicorii ST24 由来 D-タガトース3-エピメラーゼが生産した4種類のケトヘプトースのエピ化反応を触媒できることも明らかとして、3種類の生産物に関してD-セドヘプツロースのエピ化によって得られた生産物は D-アロヘプツロース、D-イドヘプツロースのエピ化によって得られた生産物は D-グロヘプツロース、L-ガラクトヘプツロースのエピ化によって得られた生産物は L-タロヘプツロースであると同定できた。このように16種類存在するケトヘプトースのうち7種類の同定が完了している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに16種類存在するケトヘプトースのうち8種類が生産できており、7種類に関しては同定が完了している。未同定のケトヘプトースを分離精製し、同定する。また、ラネーニッケル触媒を用いた還元反応と微生物を用いた酸化反応を組み合わせ、いまだ生産されていない8種類のケトヘプトースの生産を試み、すべてのケトヘプトースの生産法の確立を目指す。また、ドナー基質であるヒドロキシピルビン酸リチウムは高価であるため、大量のケトヘプトースを生産するために、これまで生産出来ているケトペントースやケトヘキソースを用いて反応性の高いドナー基質を検討する。最も反応性の高いドナー基質とD-リボース、L-アラビノース、D-キシロース、L-リキソースを用いて、D-セドヘプツロース、L-グルコヘプツロース、D-イドヘプツロース、L-ガラクトヘプツロースの効率的鎖生産法の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の申請では、七炭糖の生産のためのドナー基質として高価なヒドロキシピルビン酸リチウム塩の購入する予定であったが、ドナー基質を様々な希少糖を用いて検討した結果、より安価なドナー基質で同等程度の七炭糖が生産できることが明らかとなったため、支出が当初よりも少なくなった。また旅費に関しては、参加予定の学会がオンラインで開催されたために旅費としての支出が少なくなった。翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画は、効率的に七炭糖を生産するために酵素の固定化や大量生産に関わる物品を購入し、より研究を促進させようと考えている。
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