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2022 年度 実施状況報告書

貪食によってマクロファージ活性化を制御するフィブリン粒子組込ハイドロゲルの開発

研究課題

研究課題/領域番号 22K04845
研究機関熊本大学

研究代表者

西東 洋一  熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 特任助教 (20783567)

研究分担者 藤原 章雄  熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (70452886)
中島 雄太  熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (70574341)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードハイドロゲル / フィブリン / 粒子 / 貪食 / マクロファージ / 炎症 / 組織再生 / 生体材料
研究実績の概要

ヒト由来材料による完全なヒトフィブリンハイドロゲルを作製し、健常人末梢血から単離・分化培養させたヒト探究由来マクロファージ(HMDM)との共培養実験を行った。
ヒト由来材料(フィブリノーゲン、ヒトトロンビン)はウシと比較し高価であるため、ゲルとしての機能と強度が保たれる最低容量を探った。HMDMとの共培養でヒトフィブリンゲルはフィブリノゲン濃度10mg/mLでLPS誘導TNF-α分泌を有意に抑制し、20mg/mLで有意なIL-10分泌を誘導することがわかった。以上からゲル作製のフィブリノゲン濃度を25mg/dLと決定した。当該ゲル存在下でHMDMの様々なサイトカイン産生をELISAで解析したところ、LPS, IFN-γ刺激によるIL-2分泌の有意な抑制に加え、IL-1β, IL-6, CCL2, IL-8, VEGF, Osteopontinの有意な分泌促進を確認した。この時、HMDMは凝集体のように集合し、速やかにゲルを消化することが観察された。以上から、ヒトフィブリンゲルはHMDMによる消化性を有し、HMDMに抗炎症性を発揮するのみでなく、続くサイトカイン分泌によって、さらなる単球・マクロファージの遊走(CCL2)、好中球遊走や貪食促進(IL-8)、血管新生(VEGF)等の作用を有する可能性が示唆された。
さらに、既知であった特定粒子径のPMMA粒子を添加したHMDMの培養上清は、がん細胞株を障害し、増殖を抑制することがWSTやLDLアッセイを用いた解析でわかった。以上から、特定径粒子をマクロファージの炎症誘導によるがん治療へ応用するための基礎的知見を得た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ヒトフィブリンゲルの作製条件の決定と、HMDMに対する機能解析を進めることができている。また、フィブリン粒子の作製については停滞しているものの、PMMA特定径粒子を用いたがん細胞株増殖抑制効果は、抗炎症のみならず炎症方向での治療応用への展望が期待できる結果であり、これは当初は次年度の計画であった。以上から、本研究課題はおおむね順調に進展していると考える。

今後の研究の推進方策

ヒトフィブリンゲルの再生医療応用へ向けては、間葉系幹細胞との相互作用の解析が必要不可欠である。間葉系幹細胞の細胞株としてASC52teloを用いて、ヒトフィブリンゲル及びマクロファージ存在化での分化誘導実験を行う。
PMMA粒子添加マクロファージを用いたがん治療応用へ向けては、マウスへのがん細胞株植込モデルへの粒子投与実験を行い、in vivoでの治療効果の解析を行う。前段階として、RAW246, マウス腹腔マクロファージを用いて、粒子径, 投与濃度の異なるPMMA粒子の添加を行い、同様の粒子径がHMDMと同様にRAW246やマウス腹腔マクロファージに炎症反応が発揮させるかの確認を行う。その後実際にマウスへの投与を行い、粒子の体内動態解析と植込がん細胞株の治療モデルによる腫瘍抑制効果の確認を行う。
フィブリンゲル粒子のサイズコントロールを目指した条件検討を行う。また、様々な機能粒子を探るため、新規材料粒子の選定と機能確認を継続する。候補材料粒子はマクロファージへの添加実験を行い、同様の粒子径での反応性確認を行っていく予定である。作製ができ、HMDMに機能発現を確認した新規粒子については、上述の治療効果解析へと順次移行していく予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] <scp>CD169</scp> <sup>+</sup> sinus macrophages in regional lymph nodes do not predict mismatch‐repair status of patients with colorectal cancer2023

    • 著者名/発表者名
      Saito Yoichi、Fujiwara Yukio、Miyamoto Yuji、Ohnishi Koji、Nakashima Yuta、Tabata Yasuhiko、Baba Hideo、Komohara Yoshihiro
    • 雑誌名

      Cancer Medicine

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1002/cam4.5747

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Autoclaving-Triggered Hydrogelation of Chitosan-Gluconic acid Conjugate Aqueous Solution for Wound Healing2023

    • 著者名/発表者名
      Yamashita Yusuke、Ohzuno Yoshihiro、Saito Yoichi、Fujiwara Yukio、Yoshida Masahiro、Takei Takayuki
    • 雑誌名

      Gels

      巻: 9 ページ: 280~280

    • DOI

      10.3390/gels9040280

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Classification of <scp>PD‐L1</scp> expression in various cancers and macrophages based on immunohistocytological analysis2022

    • 著者名/発表者名
      Saito Yoichi、Fujiwara Yukio、Shinchi Yusuke、Mito Remi、Miura Yuji、Yamaguchi Tomoya、Ikeda Koei、Urakami Shinji、Nakashima Yuta、Sakagami Takuro、Suzuki Makoto、Tabata Yasuhiko、Komohara Yoshihiro
    • 雑誌名

      Cancer Science

      巻: 113 ページ: 3255~3266

    • DOI

      10.1111/cas.15442

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 予後因子である所属リンパ節洞CD169+マクロファージはミスマッチ修復機能欠損大腸癌とは相関しない2022

    • 著者名/発表者名
      西東洋一、藤原章雄、大西紘二、中島雄太、菰原義弘
    • 学会等名
      第111回 日本病理学会総会
  • [学会発表] 治療効果予測のための多がん種におけるPD-L1発現・T細胞浸潤解析2022

    • 著者名/発表者名
      西東洋一、藤原章雄、中島雄太
    • 学会等名
      第8回 がんと代謝研究会
  • [学会発表] 粒子を貪食したマクロファージが誘導する炎症を用いた新規がん治療戦略の開発研究2022

    • 著者名/発表者名
      西東洋一、瀧上斗誠、藤原章雄、中西義孝、中島雄太
    • 学会等名
      第68回 日本病理学会秋季特別総会
  • [学会発表] 粒子を貪食したマクロファージが起こす炎症で腫瘍をたたく新規がん治療戦略の開発2022

    • 著者名/発表者名
      西東洋一、瀧上斗誠、藤原章雄、中西義孝、中島雄太
    • 学会等名
      第45回日本分子生物学会年会
    • 招待講演

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公開日: 2023-12-25  

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