研究課題/領域番号 |
22K04846
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
中西 猛 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (20422074)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 抗体医薬 / 二重特異性抗体 / 抗体フォーマット / 共通軽鎖 / ペプチドリンカー |
研究実績の概要 |
本年度は独自に設計した二重特異性抗体フォーマットの汎用性に関する検討を中心に研究を進めた。以前の研究において、がん関連抗原HER2/HER3を標的とするIgG型非対称二重特異性抗体を作製し、二重特異性やがん細胞の増殖阻害効果を有することを明らかにした。そこで異なる抗体可変領域を用いて、同様に二重特異性抗体の作製を試みた。具体的にはB細胞表面抗原BCMA/T細胞表面抗原CD3およびB細胞表面抗原CD20/CD3を標的とする二重特異性抗体をそれぞれ作製した。まずグリシン/セリン残基から成るペプチドリンカーを介して、2種類の重鎖可変領域-1番目重鎖定常領域を連結し、A鎖発現ベクターを作製した。次に共通軽鎖可変領域-軽鎖定常領域をFc領域に連結し、B鎖発現ベクターを作製した。動物細胞を用いて、A鎖およびB鎖を共発現させ、培養上清からプロテインAカラムおよび陽イオン交換カラムにより精製したところ、目的の二重特異性抗体を得ることができた。示差走査蛍光法により分析した結果、作製した二重特異性抗体は親抗体と同等の熱安定性を有することがわかった。フローサイトメトリーおよび表面プラズモン共鳴法により分析したところ、作製した2種類の二重特異性抗体はいずれも抗原結合活性を示した。さらに、活性化T細胞に対して、BCMA/CD3二重特異性抗体、蛍光標識したBCMA細胞外ドメインを順に反応させ、フローサイトメトリーにより分析した結果、ピークシフトが見られたことから作製した組換え抗体は二重特異性を有することがわかった。また、CD20/CD3二重特異性抗体について、エフェクター細胞として活性化T細胞を用いて、CD20陽性細胞に対する傷害性を調べたところ、傷害性が見られたことから二重特異性を有すると考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は独自設計の二重特異性抗体フォーマットについて、異なる抗体可変領域を用いて二重特異性抗体を作製し、抗体フォーマットの汎用性を検証することを主目的として研究を進めた。2種類の組み合わせの標的分子(BCMA/CD3およびCD20/CD3)に対する二重特異性抗体について、HER2/HER3を標的とした二重特異性抗体の場合と同様の方法により目的の組換え抗体を調製することができた。また、作製した二重特異性抗体は二重特異性やがん細胞傷害性などの機能を示したことから、今回用いた二重特異性抗体フォーマットは汎用性に優れていると考えた。以上から本研究は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今回用いた二重特異性抗体フォーマットの場合、副生成物が生じるため、プロテインAカラムにより精製した後、さらに陽イオン交換カラムにより精製する必要がある。精製工程を簡略化し、目的抗体の収量を向上させるには副生成物の産生を抑制することが重要である。そこでB鎖のみから成る副生成物の産生を抑えるために、軽鎖定常領域と1番目重鎖定常領域を交換した二重特異性抗体フォーマットを中心に検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
想定より高収量で組換え抗体を得られたことから、当初予定していた設備備品費および消耗品費を必要としなかったため次年度使用額が生じた。次年度は多種類の組換え抗体を大量に調製する計画であるため、酵素・試薬類、プラスチック製使い捨て器具類、動物細胞培地、カラム樹脂類、センサーチップ等の消耗品費として支出する予定である。
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