研究課題/領域番号 |
22K04850
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
奈良 恵 (成川恵) 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 開発研究員 (70587443)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 拮抗微生物 / ミリオンスクリーニング / 微小液滴技術 / 青枯病菌 |
研究実績の概要 |
本研究は、微小液滴技術を用いて植物の土壌病害菌の拮抗微生物を土壌中からハイスループットに単離する大規模スクリーニング技術の開発を目的として、以下の実験を行った。 まず、青枯病菌GFP標識株(8107-GFP株)の生育培地をさまざまな組成や培養条件で検討した結果、mGAM培地を9種類の市販培地から選抜した。mGAM培地は培地の粘度が高いため、マイクロ流路におけるオイルとサンプルの送液圧力を水で作成する時よりも下げて微小液滴を作成した。8107-GFP株の微小液滴での培養条件は、封入菌体数は8細胞、培養日数は3日間、培養温度は25度とした。 次にモデル実験系を構築するために、モデル拮抗微生物を理化学研究所BRCの土壌から単離した。このモデル拮抗微生物#3-8A株は、プレート上での対峙培養を行うと、8107-GFP株に対してハローを形成し、生育を強く阻害することがわかった。この#3-8A株を、微小液滴内に8107-GFP株と共封入すると、#3-8A株の封入された液滴を増やすと8107-GFP株由来のGFP蛍光を発する液滴数が少なくなった。申請後に発売された微小液滴選抜・分注装置であるOnchip-Selectorを年度途中で購入できたため、Onchip-Selectorを用いてGFP由来の蛍光が減衰した液滴を分取したところ、その液滴から培養した微生物はGFP蛍光を持たず、8107-GFP株に対してハローを形成し、生育を強く阻害したことから、#3-8A株であることが推測された。このことから、GFP蛍光強度を標識とした拮抗微生物スクリーニングが可能であることがわかり、モデル実験系の構築に成功した。 現在この実験系を用いて、土壌よりミリオンスクリーニングを行い、拮抗微生物候補株として15属1211株の取得に成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微小液滴技術を用いて青枯病菌GFP標識株から土壌微生物まで、様々な培養条件を検討し、拮抗微生物スクリーニングに至適な実験条件を確立した。さらに、年度途中で、微小液滴の分取装置であるOnchip-Sortと、微小液滴の分注装置であるOnchip-SPiSの両方の機能を備えたOnchip-Selectorを購入できた。このため、装置の検討条件が少なくなったことで実験の進捗が早くなり、スクリーニングのモデル実験系の構築を完了し、さらに実際の土壌からの拮抗微生物候補のスクリーニングまで完了した。このため、研究開始一年目の進捗状況を「おおむね順調」とした。
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今後の研究の推進方策 |
現在、拮抗微生物候補株として15属1211株の土壌微生物が単離できている。まず、この候補株について、青枯病菌GFP標識株との対峙培養を行い、in vitroでの拮抗作用を確認する。さらにトマトを用いたin vivoでの病害抑制試験も行い、得られた拮抗微生物候補株のうち、有用なものがどのくらいの割合で取得できたかも調べる。これらの結果から、微小液滴技術を用いた大規模拮抗微生物スクリーニングが、既存技術と比較してどの程度有用なのかを評価する。 また、現在は一種類の病原菌のみを扱っているので、さらに病原菌の種類を増やして、有用微生物スクリーニングの適用範囲を広げていく。
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