近年、低環境負荷で安全性の高い生物農薬として拮抗微生物が注目されている。本研究では、微小液滴技術を用いて植物の土壌病害菌の拮抗微生物を土壌中からハイスループットに単離する大規模スクリーニング技術を開発し、多様な農業現場に対応する拮抗微生物の提供を目標とした。 昨年度は大規模スクリーニングのモデル実験系を構築した。土壌病原菌である青枯病菌をモデル病原菌として選定し、モデル拮抗微生物3-8A株は土壌より限界希釈法で単離した。微小液滴形成および微小液滴内培養の条件検討を行い、培養条件を最適化した。青枯病菌GFP標識株と3-8A株を同一液滴内に封入して、培養後GFP蛍光が減衰した液滴を選抜した。選抜された液滴から培養した微生物を青枯病菌GFP株と対峙培養すると、ハローを形成して青枯病菌の生育を強く阻害したことから、選抜液滴中の微生物は#3-8A株であることが推測された。このことから、GFP蛍光強度を指標とした拮抗微生物スクリーニングが可能であることが示され、モデル実験系の構築に成功した。この実験系で3-8A株の代わりに土壌微生物を用いて総計200万個の液滴からスクリーニングを行い、拮抗微生物候補株を1920株選抜、そのうち培養可能なものとして1216株を獲得できた。 本年度は、スクリーニングに使用する土壌を集積培養したことろ、拮抗微生物の数が増加し、より効率的な選抜が可能になった。しかしながら、蛍光菌で同様のスクリーニングを試みたところ、蛍光菌の代謝産物を選抜指標にすると、菌体の代謝状態によって液滴の蛍光強度が上下することで、偽陽性株が大量に選抜された。このことから、拮抗微生物の微小液滴スクリーニングには、過剰発現させた蛍光タンパク質などで常に安定して高い蛍光状態となるような病原菌を用いることで、より効率的なスクリーニングが可能となることがわかった。
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