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2023 年度 実施状況報告書

気相合成プロセスによるナノ粒子の表面修飾と高機能化

研究課題

研究課題/領域番号 22K04871
研究機関名古屋工業大学

研究代表者

日原 岳彦  名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60324480)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードナノ粒子 / 燃料電池 / 触媒 / ナノコンポジット / 交換結合
研究実績の概要

気相合成プロセスのプラズマ・ガス凝縮法により作製したナノ粒子混合堆積膜に、粒子界面の制御による新たな機能を付与することを目的として、2年目の研究を実施した。
(1)燃料電池の電極触媒に使用されるPtの代替材料として4、5族遷移金属の酸化物に注目した。作製したPt/NbOx複合ナノ粒子のTEM像から、Nb組成の減少に伴い、Pt-Nb合金ナノ粒子の表面に形成されていた酸化物が消失し、合金ナノ粒子の表面が露出した。これにより、最大電力密度が大きく向上した。また、I-P測定からNbとOの比と最大電力密度に相関がみられ、Nb:O = 1:2に近くなるほど性能が飛躍的に向上した。Arイオンを照射した担体に堆積したPtナノ粒子は格子収縮が見られ、酸素種との吸着が弱まることで最大電力密度が向上した。
(2)本年は、FePt/Fe系にCoを加えた三元系ナノコンポジット磁石(H相:L10-(Fe-Co)Pt、S相:Fe-Co)を作製し、磁気特性の評価を行いながら、最適な試料作製条件を特定することを目的とした。S相とH相の交換結合を制御するため、バイアス電圧Va = -2kVを印加した基板ホルダー上の石英基板に両相を混合堆積させた。L10規則相を得るために熱処理を行うと、粒子が凝集して保磁力が低下する。この問題を解決するため、RTA処理(Rapid Thermal Anneal:短時間熱処理)を行った。粒子の凝集を最低限に抑えながら、規則化が進行する短時間の熱処理条件を調査した結果、昇温速度が75℃/minより速い場合は規則化が不十分であり、75℃/minより遅い場合は粒子の凝集による保磁力の低下が確認された。本研究で得られた試料のうち最大エネルギー積が最も大きな試料は、基板バイアスVa = -25kVの試料で、その値は4.1MGOeであり、Va = 0kVの試料に比べ、約2.5倍の向上を示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究課題の目的は、コア・シェル粒子の形成機構を明らかにし、コア・シェル粒子の設計と合成を確実に行えるよう気相合成プロセスを深化させること、また、異種粒子の混合堆積と粒子界面の制御により、ナノ粒子に機能を付与することである。
(1)コア・シェル粒子の作製と燃料電池電極触媒特性の評価では、Pt触媒の代替材料として4、5族遷移金属の酸化物に注目したが、4、5族遷移金属の酸化物は、Ptよりも酸性下での耐久性に優れており、特にNbOxは優れたORR特性も持つためである。本研究では、Pt/NbOx コア・シェル粒子の作製条件を明らかにし、さらにNbOx 被覆率の制御に成功した。これにより、最大電力密度が大きく向上した。また、当初の研究計画では想定していなかったが、担体であるカーボンペーパー(CP)にArイオンを照射することで欠陥導入を行い、触媒機能を向上させることに成功した。
(2)軟磁性と硬磁性のコア・シェル型ナノ粒子、あるいは各磁性粒子の混合堆積膜から構成される交換結合磁石のモデル物質の作製と磁気特性評価では、粒子の凝集を最低限に抑え、且つ、規則化を進行させるRTA処理による熱処理条件を詳細に調査した。その結果、熱処理温度が500、及び600℃では規則化が不十分であり、800℃では粒子の凝集が確認された。昇温速度については、75℃/minより速い場合は規則化が不十分であり、75℃/minより遅い場合は粒子の凝集による保磁力の低下が確認された。保持時間については、10 minで磁化曲線に肩がみられるものの保磁力が最大となることが判明した。
以上、当初の研究目的を十分に達成し、次の段階に研究を進めさせることができたため、当初の研究計画以上に研究が進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

現在までの進捗状況で述べたように、本研究課題は当初計画以上に進展している。このため、申請時の研究計画と並行して研究遂行中に着想を得た以下の研究を実施する。
(1)コア・シェル粒子の作製と燃料電池電極触媒特性の評価では、カソード触媒としてPt触媒よりも発電性能や耐久性に優れているFe-Coに第3元素を添加すること、また、カーボン担体にイオン照射で欠陥を誘起することで、さらなる機能向上を目指す。Pt-Co合金ナノ粒子では、Coの不均一性を制御しながら触媒機能との相関を明らかにし、余力があれば、第3元素を添加した際の酸化耐性を調査する予定である。さらに、カーボン担体に替えて、グラフェン転写膜上に触媒を担持させ、炭素表面のπ共役系電子との相互作用により、Ptの電子状態を制御した試料の評価を行う。
(2)軟磁性と硬磁性による交換結合磁石のモデル物質の作製と磁気特性評価では、発展研究として量産化を視野に入れ、昨年計画を立てたメカニカルミリングによるL10-FePt以外の硬質磁性ナノ粒子の合成を継続する。これまで、Fe14W2N2の合成を塩化アンモニウムと硝酸アンモニウムを窒素源としたメカノケミカル法で試みたところ、Feの窒化物形成は確認されたが、Wとの合金化が困難であった。原料粉末の硬度差がミリングによる合金化を阻害していると考えられたため、本年は出発原料をFe-W合金として窒化物の合成に挑戦する。研究が計画通りに進まなかった場合に備え、メカニカルミリングによるL10-FeNiの合成プロセスの検討を並行して行う。FeNiの規則化温度は320℃以下と低く、拡散を伴う規則化は天文学的な時間が必要なため困難であるが、ミリングにより非平衡に格子欠陥が導入されると拡散係数が大きくなる。さらに、第3元素の添加により誘起される格子歪みも同様の効果が得られる。この方針の下で規則化の可能性を検討したい。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Li plating-stripping behaviors in Li+/Na+ mixed iodide electrolytes with small amount of BH4-2023

    • 著者名/発表者名
      Miyazaki Reona、Asai Hiromitsu、Hihara Takehiko
    • 雑誌名

      Journal of Solid State Electrochemistry

      巻: 28 ページ: 147~157

    • DOI

      10.1007/s10008-023-05666-9

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Tuning the structures and conductivity of nanoporous TiO2-TiO films through anodizing electrolytes as LIB anodes with ultra-high capacity and excellent cycling performance2023

    • 著者名/発表者名
      Chen Xuewen、Kure-Chu Song-Zhu、Liu Jiacheng、Matsubara Takashi、Sakurai Yoko、Hihara Takehiko、Lee Sung-Hyung、Osada Minoru、Okido Masazumi
    • 雑誌名

      Journal of Energy Storage

      巻: 73 ページ: 109231~109231

    • DOI

      10.1016/j.est.2023.109231

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Determination of the ion-conduction properties of Na3OBr and its dominant defect species2023

    • 著者名/発表者名
      Miyazaki Reona、Ito Shiori、Ishigami Kana、Miyazaki Hidetoshi、Hihara Takehiko
    • 雑誌名

      Journal of Materials Chemistry A

      巻: 11 ページ: 25734~25742

    • DOI

      10.1039/D3TA04318E

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Fe-Co/Fe-Co-Ptナノコンポジット薄膜の急速熱処理と磁気特性2023

    • 著者名/発表者名
      中村 周平、石川 蓮太、宮崎 怜雄奈、日原 岳彦
    • 学会等名
      日本金属学会(第173回)秋季講演大会
  • [学会発表] スパッタリング蒸着法によるSn2Ta2O7薄膜の作製と磁気特性の評価2023

    • 著者名/発表者名
      松藤 晃樹、宮崎 怜雄奈、日原 岳彦
    • 学会等名
      日本金属学会(第173回)秋季講演大会
  • [学会発表] L10-FePt /Fe-Alナノコンポジット膜の磁気特性と熱処理昇温速度依存性2023

    • 著者名/発表者名
      松永 心吾、宮崎 怜雄奈、日原 岳彦
    • 学会等名
      日本金属学会(第173回)秋季講演大会
  • [学会発表] スパッタリング蒸着法で作製した フラットバンドSn2Nb2O7の磁性2023

    • 著者名/発表者名
      長瀬風哉、日原岳彦、宮崎怜雄奈
    • 学会等名
      第33回材料フォーラムTOKAI
  • [学会発表] メカノケミカル法で作製したW添加Fe16N2の磁気特性2023

    • 著者名/発表者名
      本宮明音、日原岳彦、宮崎怜雄奈
    • 学会等名
      第33回材料フォーラムTOKAI
  • [学会発表] PEFCカソード触媒担体への欠陥導入及びグラフェン形成と出力電力特性の評価2023

    • 著者名/発表者名
      成川皓泰、日原岳彦、宮崎怜雄奈
    • 学会等名
      第33回材料フォーラムTOKAI
  • [学会発表] Fe-Co/Fe-Co-Ptナノコンポジット薄膜の 急速熱処理と磁気特性2023

    • 著者名/発表者名
      石川蓮太、中村周平、日原岳彦、宮崎怜雄奈
    • 学会等名
      第33回材料フォーラムTOKAI
  • [学会発表] 自発的に傾斜化するナノ粒子2023

    • 著者名/発表者名
      日原岳彦
    • 学会等名
      第94回マテリアルズ・テーラリング研究会
    • 招待講演
  • [図書] 傾斜機能材料ハンドブック2024

    • 著者名/発表者名
      傾斜機能材料ハンドブック編集委員会
    • 総ページ数
      420
    • 出版者
      エヌティーエス
    • ISBN
      978-4-86043-776-3

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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