研究課題/領域番号 |
22K04887
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
森本 崇宏 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究チーム長 (30525895)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | ナノ力学 / カーボンナノチューブ / CNT線材 / ロックイン発熱 / 破壊挙動 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、ロックイン発熱解析法をナノスケールでの破壊進展の前兆現象の検出を行うための新規ナノ力学評価法とするため、動的な微小振動を印可下での、ナノ構造変化と発熱構造の相関性を明らかにすることを目的としてる。 研究初年度の本年度は、提案手法の基本コンセプトの検証に取り組んだ。具体的には、微小な動的振動印可手法の確立、モデル材料の選定、モデル材料を用いた応力ひずみ曲線と発熱画像の検証を行った。動的振動の印可手法としては、従来の初期値に対する正負振動よりも、本課題で導入した正側のみの振動が、正負振動印可よりも有効であることを確かめた。また、モデル材料としては多層カーボンナノチューブのフォレストから作製したCNT膜を選定し、それらを一定の静的伸長条件下で動的振動を印可し、それらの定常電流有無の条件間での差分像を取得する事で、予備検討や研究計画時に想定した脆弱箇所可視化像と同等の画像取得が可能であることが明らかとなった。これにより、目的試料に内在する物理的な脆弱箇所を試料破断のはるか以前の段階で特定する事が可能となり、従来破断後の解析に限られていた破断や伸長といった機械特性と、試料内部の微細構造との詳細な相関研究が可能となることで、ナノ力学解析より一層の解明に貢献する事が期待される。 次年度以降ではモデル材料の最適化、動的振動および電流印可手法の最適化を行い、本手法の有効性の確認とナノ構造破壊現象解明に繋がる学理研究に取り組んでいく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は本研究課題の提案手法の基本コンセプト検証に取り組んだ。これにはいくつかのステップが存在し、①微小な振動を試料へ適切に印可する手法の確立、②微小な振動によるロックイン発熱像取得の確認(微小振動による電流変調の誘起の確認)、③試料伸長による抵抗変化に起因する微細な発熱構造取得手法の確立、④試料伸長による破断と発熱構造の相関関係の解明、⑤試料伸長による破断と前駆現象の発熱構造評価法の確立、となる。これまでに①および②に関して完了し、今後③以降についての取り組みを行っていく予定である。研究はおおむね申請書から大きく遅延することなく、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
現在研究課題は順調に進展しているものの、いくつか新規に検討する必要がある点が出てきている。一つは、コンセプト検証段階におけるモデル材料の選定についてで、微小振動によるロックイン発熱強度が小さいため、迅速な検証作業のためにも、伸長による抵抗変化が大きく、表面輻射率が大きく、取り扱いの容易なモデル試料を新たに選定し、検討を加速していく予定である。また、本検討試料として想定している単層CNT糸の選定も同時に進める予定である。単層CNT糸に関しても多くの製法・種類が存在し、微細な力学測定とロックイン発熱測定両方に適した試料を選定する必要があり、その選定も2年目以降進め居ていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、CNT線材やCNT試料の計測用に特注の据付治具などを調達する予定で有ったが、課題への取り組みを検討していく段階で、試料の工夫および手持ち治具の工夫により対応可能であることが明らかになり、導入を見送ったことにより次年度使用額が生じたものである。これらの費用は、モデル試料の購入費用や、より高感度測定を可能とする電子パーツや計測機器などに活用する予定である。
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