研究課題/領域番号 |
22K04899
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
上野 祐子 中央大学, 理工学部, 教授 (30589627)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | マイクロ粒子 / 酸化グラフェン / DNA / ハイブリダイゼーション / 吸着 / センシング |
研究実績の概要 |
本課題では、シリカマイクロ粒子の表面に、目的物質と吸着するプローブ(Ti)と、回収用基板に固定したリガンド(Ri)と結合するプローブ(Si)を同時に固定し、プローブの自在な機能発現制御によって目的物質の分離回収を可能とするシステムを実現することを目的とする。2022年度は、主としてシリカマイクロ粒子が基板上に固定される条件の検討を行った。プローブS1となるssDNAを修飾したシリカ粒子(粒径約10 μm)と、リガンドR1としてプローブS1の相補的配列を有するcDNAを修飾したガラス基板をそれぞれ作製し、R1修飾基板に流路を搭載してS1修飾シリカ粒子の分散液を流入し、流入前後の蛍光顕微鏡像から固定率を算出した。このときS1にはステムループ構造を持つssDNAを用いて、ステムが解離するとハイブリダイゼーションするようにcDNAの配列を設計し、ステム塩基対数が6および12の2条件を比較した。その結果、S1とR1のDNAのハイブリダイゼーションによってシリカ粒子をガラス基板への固定可能なことが分かった。またステム長が長いと解離しにくく、S1とR1とのハイブリダイゼーションが起こりにくいため、シリカ粒子の固定率が低下したことから、ステム長を変化させることで吸着相互作用の大きさが変化できることが分かった。またDNAのハイブリダイゼーション以外の分子アフィニティーペアの探索を行った。一例として、S2とR2にそれぞれアゾベンゼンおよびα-シクロデキストリンを用いた場合について検討している。また、修飾分子の足場となるグラフェンや酸化グラフェンと溶液中のイオンや低分子との吸着特性の検討も行っている。これらの知見を今後のシステムの設計指針に活かしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今期は、プローブS1となるssDNAを修飾したシリカ粒子(粒径約10 μm)と、リガンドR1としてプローブS1の相補的配列を有するcDNAを修飾したガラス基板をそれぞれ作製し、S1とR1のDNAのハイブリダイゼーションによってシリカ粒子をガラス基板への固定可能なことが分かった。またステム長が長いと解離しにくく、S1とR1とのハイブリダイゼーションが起こりにくいため、シリカ粒子の固定率が低下したことから、ステム長を変化させることで吸着相互作用の大きさが変化できることが分かった。修飾分子の足場となるグラフェンは、溶液中のカリウムイオンを吸着し、その表面電荷によって溶液中の分子の吸着に影響を与えることが分かった。以上から課題は順調に進捗していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はプローブS1を修飾したシリカ粒子に、目的物質と分子選択的・特異的に吸着相互作用を示すプローブT1を修飾し、目的分子の吸着特性を評価する。具体的には、目的物質をストレスマーカータンパク質であるα-アミラーゼとし、α-アミラーゼに対するDNAアプタマをT1に用いる。吸着特性の評価は、T1を蛍光標識し、シリカ粒子表面の分子修飾の足場である酸化グラフェンが蛍光共鳴エネルギー移動のアクセプターとして動作することを利用して、α-アミラーゼが吸着したときに回復する蛍光を応答信号として行う。その後、T1 が目的分子を吸着した状態において、S1とR1のDNAのハイブリダイゼーションによってシリカ粒子をガラス基板への固定可能であるかを調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
シリカ粒子やガラス基板へのプローブS1やリガンドR1の修飾方法を工夫することで、1回の実験における使用量が予定より少量で行えるようになった。このため当初予定していた試薬購入費の使用額が少なくなった。翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画として、これまでよりも配列の長いDNAプローブや標的分子のタンパク質を使用した実験を予定している。
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