研究課題
高磁場超伝導マグネットへの鉄系超伝導体線材の応用実現のためには、4.2 Kおよび10-20 Kの中低温での線材特性向上、特に応用上有利な丸線の性能向上、そして実用への足掛かりとしてコイルの作製及び実証試験が必要である。このような背景のもと、本研究課題では結晶粒の高配向化およびピン止め中心の導入による鉄系超伝導丸線の中低温でのJcの実用レベルへの向上、鉄系超伝導丸線の長尺化と高Ic化による超伝導マグネット作製の2つを目的として研究を推進した。当初の予定では研究期間は2022-2024年度の3年間であったが研究代表者の離職により2022年4月から9月までの半年間に短縮された。この期間に下記の一定の研究成果が得られた。122型鉄系超伝導体多結晶を原料とする多芯丸線(1、3、7芯)および超伝導マグネットを作製して特性の芯数依存性を系統的に評価したところ、超伝導コアの特性とソーセージングの程度に有意な芯数依存性がみられた。この結果は、マグネットの実用化のために必須な超伝導線材の多芯化における問題点と課題を提起した点で重要である。また、線材の線引きの途中過程で適当な熱処理を施すことが特性向上に有利になり得ることを示した。今後、線材作製途中過程の熱処理条件を最適化することによる線材性能向上が期待される。さらに、本研究において10 Tの高磁場中での臨界電流密度(T = 4.2 K)は最大で71 kA/cm^2に達した。この値は、鉄系超伝導体の丸線の10 Tでの臨界電流密度のこれまでの記録(54 kA/cm^2)を超えるものであり、応用化の目安の値である100 kA/cm^2に近づいた点で有益な結果である。これらの研究成果により、2022年11月末現在、学術論文1件(accept)、学会・国際会議発表3件の実績が挙げられた。さらにもう一件の学術論文を執筆中である。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Superconductor Science and Technology
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10.1088/1361-6668/aca726