研究課題/領域番号 |
22K04916
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
武仲 能子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (60467454)
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研究分担者 |
山本 貴広 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 研究戦略企画部, 総括主幹 (70392678)
相沢 美帆 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (30849948)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 液晶ファイバー / 自己集合体 / 形状変化 / 光異性化 / レーザーピンセット / 界面張力 / プレッシャーポンプ法 |
研究実績の概要 |
本研究では、液晶ファイバー、液晶ネックレス、外的刺激により変形する液晶液滴という3種類のマイクロメートルスケールの液晶自己集合体に着目し、再現性の良い作製方法の確立と、安定な形状維持を可能としたのち、それぞれの構造体が示す機械的強度と光科学的性質を観察、解析し、次世代光学素子創出に向けた基盤的な知見を得ることを目的としている。2023年度は、主に液晶ファイバー形状の安定化と機械的強度測定、光照射により形状変化する液滴のメカニズム解明に向けたデータ取得、具体的には表面張力測定を行った。 昨年度までに、重合性(液晶)モノマーが液晶ファイバー形成に与える影響について調べ、光重合による液晶ファイバーの形状安定化を試みたが、重合時の収縮の影響で形状安定化が難しかった。そこで、光重合を用いずファイバー形状を安定化させる系を新たに開発した。この系は、陽イオン性界面活性剤水溶液内に陰イオン性界面活性剤を内包した液晶を分散させることで実現する。先行研究をもとに、先行研究とは異なる相構造を持つ液晶を検討した結果、40℃程度の温度ジャンプでも形状変化しない強固な液晶ファイバーの作製に成功した。レーザーピンセットでこの液晶ファイバーを引き延ばすことにより、液晶ファイバーの機械的強度測定を計算するためのデータを得た。現在解析中である。 光照射により形状変化する液晶液滴に関しては、メカニズム解明に重要だと考えられる、界面張力変化の測定を行った。ウェルヘルミ法やスピニングドロップ法では測定困難だったため、スロベニアにて極微量の液晶滴の表面張力を測定できるプレッシャーポンプ法で測定を行い、紫外線照射時に液晶液滴と水界面での表面張力が下がることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
液晶ファイバーに関しては、形状安定化が可能になり、機械的強度を算出可能なデータ取得ができたため、当初の予定通り順調に進展していると言える。 また、光照射により形状変化する液晶液滴に関しては、メカニズム解明に向けた一連のデータ取得が完了し論文執筆段階であるため、当初の予定通り順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
液晶ファイバーに関しては、昨年度までに取得したデータを解析し、機械的強度を推定する。また、光科学的性質を明らかにするための系の構築と観察・解析を行う。 光照射により形状変化する液晶液滴に関しては、得られたデータを論文にまとめる。 2023年度までの研究で、本研究で扱っている系では、液晶ファイバー以外にもベシクルやディスク、ダンベルなど種々の自己集合構造が形成されることがわかった。そのため2024年度は、液晶ネックレス構造に加えこれら種々の微小液晶自己集合体の安定化や構造変化過程の解明、光特性評価を行い、次世代光学素子創出に向けた基盤的な知見の習得を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
<次年度使用額が生じた理由> 1~3月まで契約職員を雇用しており、3月分支払いが4月に確定するため、残額がマイナスにならないように余裕をもって執行した。そのため、約2万弱の次年度使用額が生じた。 <使用計画> 昨年度までの研究成果から、本研究で扱っている系では、液晶ファイバー以外にもベシクルやディスク、ダンベルなど種々の自己集合構造が形成されることがわかった。これは当初予定していなかった研究成果であり、2024年度は、液晶ネックレス構造に加えこれら種々の微小液晶自己集合体の安定化や構造変化過程の解明、光特性評価を行う予定であることから、当初の予定より実験消耗品を多く必要とする。そのため、約2万弱の次年度使用額は、消耗品費として使用する予定である。
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