研究課題
2022年度は、in-situ CARS装置の立ち上げと、分子系窒素ドープカーボンモデル触媒における反応メカニズムの研究を推進した。まず前者については、窒素ドープカーボン触媒の反応中間体を直接観測するために、in-situ コヒーレントアンチストークスラマン散乱(CARS)装置の開発を行った。8の字型の光ファイバー系共振器を組み、受動モード同期により、中心波長1570 nm、繰り返し周波数47MHzのパルスレーザー列を生成した。このレーザーを2経路に分岐させ、1経路の光はアンプし、もう1経路の光は、同時に複数の振動モードを測定するために高非線形ファイバーを通過させて広帯域化した。その結果、波長1100 nm~2100 nmに分布する広帯域光を生成することに成功した。今後、CARS信号を生成し、窒素ドープカーボン触媒の反応解析へと応用する。また、分子系窒素ドープカーボンモデル触媒における反応メカニズムを、電気化学的手法、電子状態の観測から調べた。モデル触媒の表面状態について観察した結果、酸塩基平衡を考慮した立ち上がり電位を決める素過程が、電気化学測定の結果を再現した。このことから、pyri-Nの酸塩基平衡によって立ち上がり電位を決める素過程が切り替わることが明らかとなった。また、酸電解液中で活性低下するのはイオン性のpyri-NH+が水和安定化することで反応中間体のpyri-NH生成電位が下がるためであった。つまり、窒素ドープカーボン触媒の活性向上には活性点近傍の疎水性を高めることでpyri-NH+の水和を防ぐことが重要であることがわかった。
2: おおむね順調に進展している
2022年度は、異なるπ共役系の中でも、分子系窒素ドープカーボンモデル触媒のメカニズム解明にフォーカスし、pHをまたいだ反応メカニズムが明らかになってきた。また、中間体をin-situ測定するために立ち上げ予定のCARS装置についても、光源が完成し、2023年度中盤には電極反応の観測が可能になると考えられる。
2023年度は、メゾスケールのサイズを持った重合系窒素ドープカーボン触媒を用いてオンセット電位、pyri-NHの生成電位などを比較することにより、π共役系の効果を明らかにする。また、in-situ CARS装置の完成を目指す。光源から出た2系統の光をフォトディテクターにより測定し、光路長を合わせる。また空間的に入射光を重ね合わせるために、ビームエクスパンダーを通してビーム径を拡大し、対物レンズに入射させる。2系統の光が対物レンズを通り集光された際のスポットを顕微測定し、空間的にスポットを調整する。またCARSでは原理上、複数のバックグランドが検出されるため、目的の信号を抽出できる配置及び解析法を確立する必要がある。特に非共鳴バックグラウンドとの識別をするために、ポンプ光のバンド幅を狭帯域化し、散乱光に含まれるレイリー光を除去するフィルターを挿入する。まずはCARSが強く発生するテストサンプルで透過配置で測定を行う。その後、電極触媒表面の観測に移行する。電解液中で電位印加を行いながら測定ができるように、専用の電気化学セルの設計・製作を行う。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 6件、 招待講演 2件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
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