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2023 年度 実施状況報告書

臨界ゆらぎダイナミクスの空間・時間分解ナノスケール高精度計測

研究課題

研究課題/領域番号 22K04934
研究機関大阪電気通信大学

研究代表者

影島 賢巳  大阪電気通信大学, 工学部, 教授 (90251355)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワード臨界現象 / 二成分系 / シア粘性 / 相分離 / 原子間力顕微鏡(AFM)
研究実績の概要

今年度の研究では、臨界二成分系の臨界ゆらぎの空間的分布に関する考察を行う目的で、微小距離領域でのダイナミクスを直接反映する物理量としてシア粘性の挙動に着目して計測を行った。原子間力顕微鏡(AFM)のカンチレバー型力センサーに貼付したガラスコロイド球を、水/ルチジンの臨界二成分系中に入れ、同じカンチレバー上に付着させた磁石粒子に外部から交番磁場を与えてセンサーのねじれ振動を誘起した。このねじれ振動によって、コロイド球はマイカ(雲母)基板との間に挟まれた流体にシアを及ぼすので、シア応答として粘性抵抗係数が測定できる。この状態で、コロイド球とマイカ基板との距離を制御して粘性抵抗係数の距離依存性を計測したところ、温度が上昇して相転移温度に近づくにつれて、2表面の接近に伴う近距離域での粘性抵抗係数の増加が鈍化する兆候が観測された。これは、コロイド球と基板の2表面が接近して相関長に近づくと、表面近傍に形成されている成分分率の偏った領域が重なり始め、分率の勾配が低下することで説明される可能性があると考えている。これは、臨界二成分系の相関長程度以下の距離レンジで起こる相互作用について実験的な考察を与える成果であると考えられる。
この成果を、ソフトマターに関する国際学会および走査プローブ顕微鏡に関する国際研究会で発表した。さらに、後者に付随して刊行される物理系欧文誌の走査プローブ顕微鏡特集号に論文投稿を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

研究の大きな柱の一つである、臨界ゆらぎの空間的な分布に関する考察は成果があがりつつあるのでほぼ順調と言える。それに対して、もう一つの柱である、臨界ゆらぎの時間スケールに対する考察については、いくつかのアプローチを検討している段階である。具体的には、特定周波数の変調をAFMの力センサーに与え、この周波数成分の応答を計測するというこれまでの研究手法を踏襲したアクティブな計測法と、高周波帯までカバーできる装置の特性を活用して、広帯域のノイズスペクトルを計測して、2表面間の相互作用によってスペクトルの変化する様子を、温度を変えて計測しようという考え方である。現在、後者の手法に必要な機材を用意して計測を試行する段階に差し掛かっている。

今後の研究の推進方策

臨界ゆらぎの時間スケールに関する考察を行うため、高周波帯までカバーする粘弾性応答の計測を行うことを計画している。そのため、実際にAFMの力センサーを高周波帯までカバーして励振し、その粘弾性応答を計測するアクティブな手法の他に、広帯域のブラウン運動ノイズを計測することで、各高調波モードに重畳する粘弾性応答を計測することができないかを検討し、試行する。
また、AFMの力センサーにコロイド球探針や変調用の磁石粒子を接着するための接着剤が、計測時間とともに二成分液体による膨潤を起こして力学特性が変動することが、研究の進捗のうえで技術的な問題となっているので、これを克服するために、有機系接着剤の代わりに低融点金属を溶着するなどの手法を検討している。これが実現されれば、本研究の計画に置いて、計測の精度を大幅に改善する進歩が期待されると考えている。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウィルス感染症の影響で延期になっていた国際学会The 7th International Soft Matter Conference (ISMC2023)が2023年度に大阪で開催されたので、当該年度の国際学会における成果発表をここで行った。そのため、海外での国際学会に参加する予定で計上していた出張旅費が大幅に低減され、約19万円が翌年度に繰り越されることとなった。
この繰り越し分は、2024年度の成果発表旅費として国内学会1件で使用する予定であるとともに、研究の進捗のために新たに必要となった低融点金属溶着のための機器の購入に充当する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2024 2023

すべて 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)

  • [学会発表] ナノメータースケールの摩擦と散逸の計測に関する最近の研究展開2024

    • 著者名/発表者名
      影島賢巳
    • 学会等名
      第19回バイオオプティクス研究会
  • [学会発表] Experimental Study of a Near-Critical Binary System at a Distance-Scale Comparable to Correlation Length2023

    • 著者名/発表者名
      Kohei Hotta and Masami Kageshima
    • 学会等名
      The 7th International Soft Matter Conference (ISMC2023)
    • 国際学会
  • [学会発表] Near-Critical Behavior of Binary System Analyzed with Variable-Temperature Atomic Force Microscopy2023

    • 著者名/発表者名
      M. Kageshima
    • 学会等名
      31st International Colloquium on Scanning Probe Microscopy (ICSPM31)
    • 国際学会

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公開日: 2024-12-25  

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