研究課題/領域番号 |
22K04938
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松田 理 北海道大学, 工学研究院, 教授 (30239024)
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研究分担者 |
友田 基信 北海道大学, 工学研究院, 助教 (30344485)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ピコ秒レーザー音響法 / ブリルアン振動 / 2次元グレーティング構造 / せん断音響波 / 縦音響波 / 音速 / 時間分解測定 |
研究実績の概要 |
透明媒質中を伝播するGHz周波数領域の超音波パルスによって単色光が散乱されると、散乱光にブリルアン振動と呼ばれる時間的な強度変調が生じる。本研究では、ブリルアン振動を用いた高度な音響・光物性評価を簡便に行う手法を開発することを目的とする。その基礎をなすものは、ナノスケール周期構造を用いたピコ秒レーザー音響法である。特にグレーティング構造(1次元周期構造)に加えてドット配列などの2次元周期構造を用いることで、生成・検出される音響波の自由度(縦波・横波の別、偏極方向など)が拡がる。等方性透明固体試料(石英ガラス)の表面にサブミクロンスケールの2次元AuおよびAl周期構造を形成した試料を作製し、ピコ秒レーザー音響法測定を行った。グレーティング構造を用いない従来の測定では、多くの場合、試料および測定の対称性のために縦波音響波のみが生成・検出可能であった。これに対して横波(せん断)音響波の観測には、縦波音響波の測定のみでは知りえない弾性テンソル成分を評価できる、一般にせん断音響波は縦波音響波より遅いので同じ周波数で比較すると波長が短くなる、などの利点がある。申請者は1次元金属グレーティング構造によってせん断音響波が生成・検出が可能であることを、適切な入射角を持つ斜め入射プローブ光学系を用いて実験的に既に示しているが、この方法では試料の保持角度の条件が厳しく測定は難度の高いものであった。これに対して2次元周期構造を用いることで、単純な光学配置であっても実効的に自由度の高い斜め入射光学系に相当する測定が可能となり、せん断音響波の検出が簡便になる。前年度に引き続いて、入射光と回折光が反平行になる光学配置において、せん断音響波の検出実験を行った。特にせん断音響波の検出効率の入射光偏光依存性を詳細に調べ、測定結果を説明できる理論モデルの構築を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
作製した2次元金属グレーティング構造に対して、ピコ秒超音波法を用いたせん断音響波の検出実験を継続した。特にせん断音響波検出効率の偏光依存性に注目した測定を行い、その結果を説明できる理論モデル構築を進めた。これらの結果の一部は2023年6月に開催された国際会議Phononics2023(英国、マンチェスター、招待講演)、2023年9月に開催された国際会議The 12th Asia-Pacific Laser Symposium(函館、口頭発表)、において発表した。また、関連研究として、ピコ秒超音波法において検出光入射角を変化させながら測定することによって、透明媒質中の空間的に不均一な誘電率分布をマッピングできることを理論的・実験的に示した。この結果は学術専門誌Photoacousticsに論文発表した。
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今後の研究の推進方策 |
2次元金属グレーティング構造によって生成された縦波・せん断音響波による光散乱を、理論的に定式化し、測定結果の定量的な解析を進める。特に、偏光によって光散乱の効率がどのように影響を受けるかを調べ、せん断音響波の検出に最適な光学・偏光配置を検討する。これらの結果を学術論文にまとめ適切な学術専門誌に発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に引き続きオープンアクセスジャーナルへの投稿料が割引されその差額が2024年度に持ち越された。また、予定していた国内会議への参加を日程の都合で見送ったために、その経費が2024年度に持ち越された。これらの経費は2024年度の経費と合わせて、研究、学会出席、論文投稿などに支出される予定である。
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