研究課題/領域番号 |
22K04939
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
木下 郁雄 横浜市立大学, 理学部, 准教授 (60275021)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 光電子分光 / 熱力学温度 / フェルミ・ディラック分布 |
研究実績の概要 |
材料表面およびナノ構造の局所的な温度または熱物理的特性を正確に測定することは、表面科学およびナノ科学の分野において非常に重要である。表面分析やナノスケール測定アプリケーションに不可欠な、局所性(表面選択性)、非接触測定、他の測定装置との併用という3つの重要な条件を満たす実用的な温度測定技術を確立することが必要である。 フェルミ ディラック (FD) 分布は、熱平衡にある材料内の電子状態の占有を熱力学的温度の関数として表す。 光電子分光法を用いて電子のエネルギー分布を測定することで、FD分布を求め、熱力学温度を求めることができる。これまでの研究では、FD分布とスペクトルのブロードニングを考慮した関数を光電子スペクトルにフィッティングすることで熱力学温度を決定する方法を見出してきた。しかし、温度決定精度が実用的な精度である1K以下にできなかった。本研究では、フェルミ準位の上下の光電子スペクトルの面積比を計算することにより、熱力学的温度を決定する方法を提案した。この技術には、表面選択性、非接触測定、超高真空条件下での表面分析やナノスケール測定で一般的に使用される他の測定装置との併用など、いくつかの利点がある。 本研究では、液体窒素、液体ヘリウム、室温の 3 つの異なる温度で測定されたAu (110) 表面上のフェルミ準位付近の光電子スペクトルに対して、面積比法を使用して、1 K 未満の精度で熱力学温度を決定することに成功した。本研究の成果に関して特許出願を行った。また、研究論文を投稿中。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、光電子温度計に特化した新規な電子エネルギー分析器を開発する計画である。従来の電子エネルギー分析器を用いた光電子分光測定では、数10分の測定時間を要する。過渡的な表面試料温度の変化、あるいは、マイクロ・ナノ領域の動的な熱物性を計測するためには、これまでにない極めて高速な電子分光測定を可能とする電子エネルギー分析器の開発が必要である。本研究で開発する電子エネルギー分析器は、検出部に位置検出計数測定することで測定エネルギー幅を一度に検出する積算型である。そのためには、試料から放出した電子を半球部入口スリットに収束させる静電レンズ部において極力色収差を補正する必要がある。色収差のない静電レンズの開発は本研究の最も重要な課題である。これまで四重極レンズを導入し電子飛行軌道のシミュレーションを行っているが、十分に満足な条件を得ていない。そのため、現在も電子レンズのシミュレーションを試行し開発を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
上記の現在までの進捗状況で説明したように、本研究を推進するために高速な電子分光測定が可能な新規な電子エネルギー分析器の開発が急務である。そのための色収差補正をもつ静電レンズの開発が重要な課題である。今後の計画として、共同研究者の所属する産業技術総合研究所内において、電子レンズの開発の経験のある専門家と協議を重ねることで必要な情報を収集し静電レンズの開発を推進する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において、電子エネルギー分析器の静電レンズの開発費を執行する予定であったが、静電レンズの設計が遅れたため、開発費を次年度で執行する。その他、翌年度分として請求した情勢金と合わせて、電子エネルギー分析器の開発費として執行する予定である。
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