研究課題/領域番号 |
22K04944
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 弘紀 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (60321981)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 磁場中気相輸送法 / 磁場中結晶成長 / 磁気力 / 磁気科学 / 強磁場 |
研究実績の概要 |
磁場や磁気力を利用した高品質,高機能材料の作製を目的として,本年度は材料作製に用いる新たな装置の開発を進めている.開発中の装置は,強磁場中で物理気相輸送法による結晶作製とその場観察を可能とするもので,加熱源に透明ガラスヒーターを用いることで試料の加熱と観察を可能にしている.装置は汎用型の分割型ガラスヒーターを購入し,マイクロCCDカメラ等と組み合わせ,無冷媒超伝導マグネットの室温ボア52mmに挿入できるようにする.分割型ガラスヒーターは加熱部が3分割され,それぞれ独立に温調ができるため,試料成長空間に温度勾配を付けることが可能となる.装置の設計にあたり,既存の装置で磁場,磁気力場や温度をパラメータとして,尿素を試料とした予備実験を繰り返した.結晶をコイルの中心位置で析出させた場合,即ち,磁場のみが作用し磁気力が働かない位置の場合,析出した結晶には磁場の強さによる違いは見られなかった.一方,磁気力が働く位置に設置した場合には,結晶の析出する領域が磁気力の働く向きに従って上方あるいは下方に移動した.特に下向きに磁気力が働く場合には,磁気力が強くなるほど結晶が密集し,結晶同士が融合していた.これらの結果から,磁場中物理気相輸送法によって析出する尿素結晶は,析出位置や形態,密集度に磁気力が影響していることが定性的には言えることが分かった.ただし,結晶の形態の違いには析出位置の違いによる装置内の温度分布の影響も考えられるため,今後は新しい装置で温度分布を積極的に制御した実験による検証が必要である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
装置の設計,製作の最適化のため,予備実験を繰り返した.実験のパラメータとして,磁場,磁気力,温度とその保持時間などがある.一方で,超伝導マグネットは共同利用設備のため利用時間が限られており,実験に予想より多くの時間を費やした.また,成長容器としている試験内壁に結晶を析出させた場合,成長終了後の試料を磁場や磁気力の方向との関係を保ったまま取り出すのが難しく,その対策も検討した.装置作製に用いる汎用型のガラスヒーターはそのままでは磁場中での加熱,観察実験には用いることができないため,実験条件に合わせて改造が必要である.しかしながら,予備実験の結果から設計方針は立ったため制作に着手しているが,全体としては当初計画よりも遅れることとなった.
|
今後の研究の推進方策 |
装置の設計,製作には着手しているため,こちらを滞りなく進めていく.それと同時に,既存の装置を使ってさらにパラメータを振った実験をすることで結晶作製条件の最適化を実施する.その結果を基に新しい炉での実験をスタートし,炉の変更に速やかに対応できるようにする.また,これまでに得られている結晶の解析も進め,定量的な評価も実施していく.
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は,装置の設計,製作が遅れたことと,参加予定であった国際会議が新型コロナ感染拡大の影響で次年度に延期になったためである.装置作製については既に着手しており,必要な部品の作製や購入で使用する.国際会議についても今年度開催予定なので,旅費,参加費等で使用する予定である.
|