研究課題/領域番号 |
22K04960
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
江藤 数馬 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究員 (70711828)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | SiC / 結晶成長 / ドーピング / 結晶欠陥 |
研究実績の概要 |
Siでは到達できないような10 kV以上の高耐圧SiC-IGBTの開発には低抵抗なp型基板が必要であるが、IGBTに適した低抵抗なp型基板は現在でも市場で手に入らない。これは、SiCの量産技術である昇華法においてp型(Al)ドープした4H-SiCの結晶成長がn型(N)ドープした結晶成長と比較して困難だという背景がある。本研究では現状では困難とされている高品質なp型4H-SiCの長尺結晶成長を昇華法で実現するための欠陥制御技術の開発を目的とする。そのために成長中のドーピングと欠陥発生との関連性を明らかにし、低抵抗・低欠陥なp型4H-SiC成長法の確立を目指している。 Alドーピングを伴う昇華法成長は、通常のSiCの昇華法成長のるつぼ構造に追加の工夫が必要であり、本研究では2ゾーンの加熱帯を有する昇華炉にてSiC原料と炭化アルミニウムをそれぞれ加熱する事により、Alドープ濃度を制御したp型SiC成長を実現している。このようなp型成長においては、ドーピング濃度とSiCの多形異常の発生や貫通転位の増加が通常のSiC成長と比べて顕著に見られる事が多く、AlとNのコドーピングを用いるなどのドーピング濃度制御が欠陥制御に有効であることが見いだされつつある。 本研究では貫通転位の増加程度のドーピング濃度依存性の検証を中心に進めており、Al単独ドープ条件では10の20乗 (cm-3)を越えるような高Alドーピング濃度条件では顕著に貫通転位が増加する事を見出しており、一方で一定のAlドーピング濃度以下の成長条件では、貫通転位数をあまり増加させずにp型SiC成長が実現可能である事が判明している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、貫通転位数が高Alドーピング濃度条件において顕著に増加する事を見出すことが出来ているが、高Alドーピング濃度でも転位密度数を抑えるような成長条件が昇華法成長でも実現可能かどうかの検証を十分な程度で実施する事がまだ出来ていない。高ドーピング濃度での転位数増加は、急激な濃度変化による格子不整合などが要因になりうるため、緩やかなAlドーピング濃度変化になるような成長を本研究にて検証中であり、十分に確度の高い結果を得るには、引き続きの結晶成長実験が必要な状況である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、貫通転位数増加とAlドーピング濃度との関係の検証を引き続き実施し、ドーピング濃度の調整のみでの高品質なp型SiC成長が実現できるかを明らかにすることを目標とする。上述の緩やかなAlドーピング濃度変化になるような成長実験の検証に区切りがつき次第、AlとNのコドーピングによる成長実験の検証に移り、コドーピングを成長に用いる事が貫通転位数の制御にどのように影響するかを検証し、p型SiC成長におけるドーピング濃度と貫通転位数との相関を明らかにしていく。
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