研究課題/領域番号 |
22K04969
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
興 雄司 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (10243908)
|
研究分担者 |
吉岡 宏晃 九州大学, システム情報科学研究院, 助教 (20706882)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | シリコーン / 低屈折率化 / ナノポーラス / ナノフォーミング / エマルジョン / 異方性光散乱 / 可変光散乱 |
研究実績の概要 |
ナノサイズの気泡を発生して透明材料とする目的のため、二つの方法について調査した。 (1)従来より水のような材料にナノファインバブルを作成する目的で開発された特殊ノズルを用い、粘度を下げたPDMSを通すことでナノファインバルブを発生させた。(2)当初予定になかったエマルジョンを利用したバブル発生法を調査した。 (1)の手法では水に比べバブルのサイズ/密度ともに不十分となり、また、大量(10000mL)のPDMSを用いて高速循環させる必要もあるため、9月より方法(2)などの別の方法の探索を行った。PDMSが疎水性で有ること、また水蒸気透過性が高いことに着目し、気泡ではなく水泡を作成する方法を検討し、(2)に示す方法を調査した。 水を 5%から10%加えて公転自転ミキサーで強力に攪拌することで、PDMS+水のエマルジョンが生成できる。しかる後に水を蒸発させることでPDMS内部に気泡が残留する。文献調査により界面活性剤としても機能するイソプロパノールを添加することで、エマルジョンの水泡サイズを最終的に500-600nm程度まで小さくできることを見いだした。エマルジョン生成後、サイズの大きな気泡は真空脱泡・遠心分離で除去した後、オーブンで70度に加熱することで固化させる。固化直後はイソプロノールを含む水泡による散乱のため、試料は白濁しているが、イソプロパノール・水の順に水泡部から内容液が蒸発するに従い試料は透明になり、若干の散乱が残留するものの透明な1cm立方程度のバルクとなる。体積縮小は非常に小さい。この試料はレーザー光などで若干散乱があるものの、圧縮に伴なう散乱係数の減少や、電子顕微鏡観察による気泡サイズ観測を通して、1ミクロンを下回る平均粒径と、主要な粒径サイズが400-600nm程度であり、屈折率も1%程度低下していることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定されていたスパイラルバルブ式が不調であったが、エマルジョン法が本研究目的にも利用可能であることを見いだし、目的に合わせた最適化で、透明度の高いナノフォーミングPDMSを作製することに成功している。もう一つの課題であったバブルの密度についても屈折率に違いが観測されることから、目的の低屈折率化も可能となる程度のバブル密度も得られていることが示唆された。 当初、水蒸気がPDMSを透過することを利用した、バブルへの溶液注入については、二年目以降に考えていたテーマであるが、はからずとも、エマルジョンの水泡内水分蒸発が確認されており、これはバブルへの溶液注入が可能であることと、その方向が逆であるものの、十分に期待できる結果である。 以上のことから、予定していた手法については機能しなかったものの、それを補いうる手法を発見し、その結果も今後の研究に大きな可能性を示していることから、上記のように判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
エマルジョン作製時のバブルサイズをさらに30-60%程小さくする作製手法を検討する。そのため、最初に導入したスパイラルジェット、または自転公転ミキサーにおけるボールミル導入など、エマルジョン作製について剪断力を上げる試みを行う。剪断力を上げることで、バブルサイズを200nm程度まで下げれば、その透明度は上昇すると思われる。 同時にPDMS以外の新しいエラストマーにもこの方法が有効であることを証明するべく、予備実験を行う。 ナノバブルのサイズを小さくするとともに、一年目で十分に検討しなかった、バブルの一方向圧縮による異方性散乱について、詳しく調査を行う。特に,圧縮した場合には同じ方向にバブルが薄くなることで、同一方向に進行する光についてのみ散乱係数が減少する「意匠性散乱媒質」の特性を確認/調査を行う。
|