研究実績の概要 |
本研究は二酸化炭素(CO2)を吸収したアミン水溶液に超音波を照射することで、低温にてCO2を脱離することを目的とした研究である。前年度は、CO2を圧入(0.1- 0.5MPa, 17h, 20-25℃)した後のトリエタノールアミン(TEA)水溶液に、超音波を照射(28kHz)することで、溶存二酸化炭素(CO2(aq))の脱離が可能であることを明らかにした。本年度は、超音波の出力(溶液内に伝わるエネルギー)と脱離量の関係を調べた。また、5.0MのTEA水溶液 (200mL)に対してCO2を圧入(0.5MPa, 18h, 20-25℃)した後、超音波照射(28kHz, 200W)を20℃で60分行ったところ脱離率は62%と高い値を示した。ただし、照射40分以降は大きな脱離率変化がなく、これは照射により溶液中のCO2(aq)量が減少したことが一因と考えた。CO2を加圧吸収した溶液からCO2を超音波で脱離した後の、溶液中のCO2量は、大気圧下でTEA水溶液にCO2を流入し吸収平衡になったときの値よりも大きな値であったため、時間をかければさらにCO2が脱離すると考えられる。より短時間でCO2を脱離するためにCO2を大気圧下で流入(100mL/min)しながら超音波を照射することを検討した。超音波の音圧変化により流入したCO2気泡が膨張する際に周りの溶存CO2を取り込む効果、およびCO2気泡が収縮する際に気泡内が高温となり気泡付近のCO2溶解度が低下する効果が期待できる。予備実験として、第1級アミン水溶液に大気圧下で超音波照射をしながらCO2を流入した場合と、超音波照射せずにCO2を流入した場合の吸収量を比較したが、大きな変化は確認できなかった。第3級アミンでは、超音波を使用すると吸収量は低下した。これは、超音波照射下における第3級アミンのCO2吸脱着速度差が大きいためと考えられる。
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