研究課題/領域番号 |
22K05003
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
窪田 光宏 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (60345931)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 中空多孔質シリカ微粒子 / 中空多孔質アルミナ微粒子 / 化学蓄熱材 / 水和速度 / 吸熱量 |
研究実績の概要 |
本研究では,高密度蓄熱,放熱ロスミニマムを可能とする化学蓄熱技術に着目し,蓄熱材微粒子と排ガスの直接接触熱交換および蓄熱材微粒子の気流搬送を組み合わせた新たな熱回収・熱輸送システムの構築を目指している。 令和4年度は,提案システムの中核をなす化学蓄熱材内包中空多孔質微粒子の調製,ならびにその水和・脱水速度の把握を行った。具体的には,中空多孔質微粒子の素材としてシリカおよびアルミナを選定し,テンプレート法,ダブルエマルション法,ハイブリダイゼーション法による微粒子調製を試みるとともに,調製した粒子に対して走査型電子顕微鏡による形態観察および粒度分布測定を実施し,最適な調製条件の検討を行った。また,蓄熱材として~100 ℃の低温域に対して水酸化リチウムと硫酸マグネシウムを,300 ℃級の中温域に対して水酸化マグネシウムを選定し,真空含浸法で中空微粒子に内包することで蓄熱材内包微粒子を調製した。蓄熱材微粒子は,熱重量分析装置による30 ℃,相対湿度60%での水和実験,示差走査熱量計を用いた3600秒水和時の吸熱量測定により特性評価を行った。 この結果,ダブルエマルション法により中空多孔質シリカ,ハイブリダイゼーション法により中空多孔質アルミナ微粒子が安定して調製可能であることを示した。また,化学蓄熱材の内包において,本年度調製したシリカ微粒子はアルカリ溶液に対する耐久性が想定以上に低く,実用上,硫酸マグネシウムのみ内包が可能であることが確認された。さらに,水和実験より,硫酸マグネシウム内包多孔質シリカ微粒子では硫酸マグネシウム単体に比べて水和速度が向上するだけでなく,500 kJ/kg以上の蓄熱量を確保可能であることを示し,提案システムに必須な化学蓄熱材内包中空多孔質微粒子の調製方法の確立に向けた見通しが立ちつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はシリカ,アルミナを原料としてさまざまな手法で中空多孔質微粒子の調製,ならびに化学蓄熱材内包微粒子としての基礎評価を実施した。この結果,化学蓄熱材内包中空多孔質微粒子の調製方法の確立に向けた見通しが立ちつつある。しかし,現時点では粒子径を任意に制御することが困難であったり,調製法によっては微粒子の形成が十分でない場合もあり,微粒子の最適調製法の確立にはさらなる検討が必要な状況にある。また,化学蓄熱材の微粒子内への内包率のさらなる向上やサイクル耐久性の評価にも取り組む必要がある。以上のように,最適化された化学蓄熱材内包中空多孔質微粒子の調製には,今しばらく時間を要すると考えられ,微粒子調製方法を1年で確立するとした当初系計画に対しては,やや遅れている状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は,まず化学蓄熱材内包中空多孔質微粒子の調製方法の確立に注力する。中空多孔質微粒子の製造~化学蓄熱材の内包・評価までの基本フローは構築済みであることから,令和5年度は系統的な検討を行うことで効率的に最適な調製方法・条件を見出す。この際,以降の検討で重要となる試料の大量調製のしやすさについても考慮する。 上記の検討に並行して,令和5年度に本来実施予定である蓄熱材微粒子の流動特性の把握に向け,流動層型反応器や空気供給配管の整備を進める。そして,化学蓄熱材内包中空多孔質微粒子の調製方法が確立された時点で,蓄熱材微粒子を大量調製して流動特性の把握に移行することで,実施計画に対する遅れを取り戻す予定である。
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