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2023 年度 実施状況報告書

水素サプライチェーン構築を目指した低品位石炭資源採掘-CO2貯留システムの開発

研究課題

研究課題/領域番号 22K05005
研究機関九州大学

研究代表者

笹岡 孝司  九州大学, 工学研究院, 准教授 (20444862)

研究分担者 島田 英樹  九州大学, 工学研究院, 教授 (70253490)
濱中 晃弘  九州大学, 工学研究院, 助教 (20758601)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード石炭地下ガス化技術 / 低品位炭 / 水素生成ポテンシャル / CO2マイクロバブル / 高炉スラグ / 炭酸塩鉱物
研究実績の概要

令和5年度は、以下の2項目について室内実験により検討を行った。
①石炭地下ガス化技術を用いた低品位炭からの水素生成ポテンシャル
本実験では、ペール缶を用いて人工炭層試料を作製し実験に供した。本実験結果から、低品位炭においても高品位炭と同様にガス化領域の温度が1,000℃以上を示し、高温領域が広がることが確認された。また、生成ガスの成分および平均発熱量についても、両石炭で顕著な差はなく、低品位炭をガス化した場合においても、可燃性ガスが安定して生成できることが明らかとなった。一方、高品位炭と比較して低品位炭の方が反応石炭量あたりの生成ガス量が少なく、注入酸素量あたりの反応石炭量が多いことも明らかとなった。以上の結果から、低品位炭では石炭より発生する可燃性ガスは少ないものの、き裂生成に伴う反応領域の拡大により反応石炭量および生成ガス量が増大するため、高品位炭と同等の可燃性ガス量を回収できると考えられる。
②CO2マイクロバブル水と高炉スラグの反応を用いたCO2の固定化
CO2固化材として高炉スラグを選定し、CO2マイクロバブル水と高炉スラグの反応によるCO2の固定化に関して各種室内実験(分離水の溶出イオン測定、XRD試験、熱分析)を実施し種々検討した。その結果、CO2マイクロバブル水中のCO2が消費され、Ca イオン濃度の減少が確認された。また、XRD 試験の結果より、CaCO3鉱物としてCalcite やVaterite が同定されたため、CO2マイクロバブル水中の CO2は炭酸塩鉱物として固定化されたと推察された。さらに、CaCO3 の化学結合が 600℃付近でCaOとCO2に分離することから、熱分析による 600~700℃の重量変化の結果よりCO2固定量を算出した結果、水を混合した試料と比較してCO2マイクロバブル水を混合した試料のCO2固定量が大きくなることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

令和5年度に予定していた「低品位石炭資源開発採掘システムに関する検討」として、石炭地下ガス化技術(以下、UCG)の適用に関して検討を行った結果、これまで適用されてきた高品位炭に比べ、低品位炭では石炭より発生する可燃性ガスは少ないものの、き裂生成に伴う反応領域の拡大により反応石炭量および生成ガス量が増大するため、高品炭と同等の可燃性ガス量を回収できると考えられ、また注入酸素当たりの水素の生成効率についても低品位炭は高品位炭と比較して遜色ないことが示されており、低品位炭は UCG による水素製造において十分なポテンシャルを有することが明らかになった。また、「CO2ガスモルタル充填材の開発およびその評価」として、CO2固化材として高炉スラグを選定しCO2マイクロバブル水を用いてCO2の固定化に関して検討を行った結果、CO2マイクロバブル水中の CO2 が炭酸塩鉱物として固定化されることが明らかになるとともに、その固化過程において炭酸塩化されていないCO2も充填材の空隙内に形成された構造トラップによって貯留されている可能性が明らかとなり、CO2 マイクロバブル水および高炉スラグの反応によるCO2の固定化は効果的であることが明らかとなった。
以上の結果から、本研究はおおむね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

令和6年度は、令和4年度および令和5年度に引き続き以下の項目について検討するとともに、本研究の総括を行う。
①CO2ガスモルタル充填材の開発およびその評価:CO2ガスモルタル充填材として、令和5年度で検討した高炉スラグとCO2ナノバブル水を用いて、配合および供試体試料の養生期間を変化させて以下に示す各種特性について測定を行い、最適な配合およびCO2固定化の長期ポテンシャルについて検討を行う。1) CO2ガスモルタル充填材の流動性および固化強度、2) 炭酸塩化によるCO2の固化および構造的トラップによるCO2貯留能力の評価、3)炭酸塩鉱物の長期安定性
②CO2ガスモルタルの現場注入実験の実施:令和4年度に引き続き北海道三笠市で実施予定のCO2ガスモルタルの現場注入実験に参画し、注入特性ならびに注入後の安定性に関するデータを収集し評価を行う。
③カーボンオフセットを目指した採掘跡地の環境修復工法の開発:採掘跡地の環境修復は、周辺環境ならびに生態系保護の観点からも必要不可欠であることから、検討に必要な情報収集を行うとともにカーボンニュートラルに関する評価・検討を行う。
令和4年度からの研究成果をとりまとめ、本研究の総括を行う。

次年度使用額が生じた理由

令和5年度も、コロナの影響により調整が遅れ、予定していた研究フィールドとして海外の炭鉱調査が実施できなかったことによるものである。令和6年度は、令和5年度に実施できなかった海外の坑内掘炭鉱の調査を実施するとともに、国際学会への出席および成果発表や、さらに北海道三笠市で実施予定のCO2ガスの採掘跡地への注入試験への参加も予定しており、これらの渡航費用・旅費に使用予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Monitoring the Gasification Area and Its Behavior in Underground Coal Gasification by Acoustic Emission Technique Instead of Temperature Measurement2023

    • 著者名/発表者名
      Akihiro HAMANAKA, Yuma ISHII, Kenichi ITAKURA, Takashi SASAOKA, Nuhindro Priagung WIDODO, Budi SULISTIANTO, Junichi KODAMA, Gota DEGUCHIHideki SHIMADA,
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 139 ページ: 12p

    • DOI

      10.1038/s41598-023-36937-0

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Visualization of Movement and Expansion of Coal Reaction Zone by Acoustic Emission Monitoring in Underground Coal Gasification2023

    • 著者名/発表者名
      Rika IRIGUCHI, Yuma ISHII, Akihiro HAMANAKA, Faqiang SU, Kenichi ITAKURA, Junichi KODAMA, Takashi SASAOKA, Hideki SHIMADA, Gota DEGUCHI
    • 雑誌名

      Engineering 2023

      巻: 4 ページ: 2690, 2977

    • DOI

      10.3390/eng4040166

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] UCGにおける水注入が生成ガスおよび反応領域の温度に与える影響に関する基礎的研究2023

    • 著者名/発表者名
      入口梨佳,濵中晃弘,笹岡孝司,島田英樹,板倉賢一,児玉淳一,出口剛太
    • 学会等名
      資源・素材学会九州支部春季例会
  • [学会発表] Assessment of Gasification Area with Acoustic Emission Instead of Temperature Monitoring in Underground Coal Gasification2023

    • 著者名/発表者名
      Akihiro HAMANAKA, Yuma ISHII, Kenichi ITAKURA, Takashi SASAOKA, Hideki SHIMADA, Faqiang SU, Junichi KODAMA, Gota DEGUCHI
    • 学会等名
      26th World Mining Congress
    • 国際学会
  • [学会発表] UCG(石炭地下ガス化)システムにおける AE モニタリングによる石炭の反応領域の可視化2023

    • 著者名/発表者名
      入口梨佳,濵中晃弘,笹岡孝司,島田英樹,板倉賢一,児玉淳一,出口剛太
    • 学会等名
      第41回西日本岩盤工学シンポジウム
  • [学会発表] 坑内炭鉱の払跡におけるマイクロバブルを用いた高炉スラグスラリーの注入によるCO2 の固定化2023

    • 著者名/発表者名
      本郷 健,濵中晃弘,笹岡孝司,島田英樹,板倉賢一,Zhao Yafei,高橋一弘,濱 幸雄,金 志訓,山中真也,児玉淳一,原田周作
    • 学会等名
      第41回西日本岩盤工学シンポジウム論文集
  • [学会発表] 石炭地下ガス化(UCG)システムにおける反応領域の温度計測に代わるAEモニタリングの適用性2023

    • 著者名/発表者名
      石井悠真,濵中晃弘,板倉賢一,児玉淳一,笹岡孝司,島田英樹,出口剛太
    • 学会等名
      資源・素材関係学協会合同秋季大会
  • [学会発表] Fundamental Study on the Effect of Water Injection on the Composition of Product Gas and the Reaction Temperature in Underground Coal Gasification2023

    • 著者名/発表者名
      Rika IRIGUCHI, Akihiro HAMANAKA, Takashi SASAOKA, Hideki SHIMADA, Kenichi ITAKURA,Junichi KODAMA, Gota DEGUCHI
    • 学会等名
      International Symposium on Earth Science and Technology 2023

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公開日: 2024-12-25  

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