研究課題/領域番号 |
22K05007
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
長瀬 慶紀 宮崎大学, 工学部, 教授 (90180489)
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研究分担者 |
友松 重樹 宮崎大学, 工学部, 助教 (30315353)
河村 隆介 宮崎大学, 工学部, 教授 (70234135)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 太陽熱 / 熱交換器 / 蓄熱粒子 / ビームダウン式太陽集光装置 |
研究実績の概要 |
宮崎大学に設置されているビームダウン式太陽集光装置によって集光した太陽光エネルギーを蓄熱粒子に熱(太陽熱)として蓄え,太陽熱を使って熱機関を動かすため,蓄熱粒子と熱機関の作動流体の間で熱交換を行う蓄熱粒子型熱交換システムを開発することを目的として,実験的研究を行っている.2023年度は,前年度に検討を行った単管実験装置を,伝熱量の定量解析ができるように改良を実施した.単管実験装置の改良は全長を短くし,単管を垂直に立て,温度計測のための熱電対を配置したことである.なお,単管実験装置の改良にあたって,粒子の流れをYADEというPython上で動く粒子法による数値シミュレーションソフトを用い,熱交換器内の粒子は,滞りなく入口から出口に向かって流れてることを確認した. また,全長を短くすることで作動流体が熱交換器を通過する距離が短くなり伝熱面積が減少することから,作動流体の温度上昇幅が減少することとなるため,粒子加熱装置を追加して600℃程度まで粒子を加熱することが可能になった. 単管実験の結果,熱交換器からの熱損失を無視して粒子から作動流体までの熱通過率を求め,作動流体の流量を増やすと,粒子から銅管への熱伝達率はほとんど変化しないが,熱通過率および銅管から作動流体への熱伝達率は上昇することが確認できた. さらに,高温の粒子から熱機関作動流体への熱通過率を上昇させるために,粒子の間の空気に流れを与えるため,ブロアを用いて循環した流れを発生させた.しかし,φ5 mmの粒子を使用したが,粒子間の隙間が小さく,粒子間を流れる空気の流動抵抗が大きかったため,粒子間を空気が移動せず,ブロアは多くの外気を吸引し,また外気へ排出したため,当初予定した伝熱促進の効果が得られなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の2023年度以降の計画は,熱交換器の設計・製作および特性調査を行い,蓄熱槽を設計・製作することで,蓄熱粒子循環型熱交換システムの構成部品を完成させ,その構成部品を組み上げてシステムを完成させ,ビームダウン式太陽集光装置での実験を行うこととなっている. シェルアンドチューブ型熱交換器の小型モデルを製作したが,全長が長く実験スペース内に収めるためには熱交換器を傾ける必要があり,熱交換器上部では粒子が充填されていない空間が大きく,熱交換器内が均一状態でないことから伝熱解析を行うことに支障を生じた.また,完全体が1mと長いため,加熱した粒子を熱交換器に充填するために時間がかかり,粒子の温度低下も問題となった.そこで,2023年度は,熱交換器を半分にして垂直に立てることとし,熱交換器内のチューブを熱交換器の出入口で引っ張ることで,銅管のように柔らかい材料でも熱交換器内の中心をまっすぐに通すように改良を施した.また,熱交換器の長さが短くなったことから,加熱された粒子とチューブを通る気体との間での熱交換に関係する伝熱面積が減少してしまうため,チューブ内を通る気体の上昇温度が低下し,伝熱解析精度が低下してしまうので,粒子の加熱温度を高める改良を行った.具体的には,ニクロム線による加熱により2022年度より100℃高い500℃程度まで粒子加熱温度を上昇させることができた. 蓄熱粒子の隙間に空気を流して,シェル内の粒子からチューブを流れる気体への伝熱量を増やすため,熱交換器の改造を行ったが,粒子間の隙間が小さく粒子間を空気が流れず外気を吸い込んでしまうため,予定した性能を引き出すことができなかった.さらに改良を行う必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,太陽光を蓄熱粒子に照射し太陽熱に変換するレシーバと蓄熱粒子から熱機関の作動流体へ熱を伝える熱交換器,その両者の間に設置する蓄熱槽,粒子を一定流量で流動させるためのスクリューフィーダを組み上げたシステムを完成させ,ビームダウン式太陽集光装置による加熱実験を行うことが当初の計画となっている.しかし,宮崎大学のビームダウン式太陽集光装置は10年以上が経過し,焦点位置での集光強度が1/10まで低下してしまったことから,2024年度に撤去することが2023年度末に決定した.よって,当初計画していたビームダウン式太陽集光装置での加熱実験を実施することができなくなったため,実験室での熱交換器の実験およびその理論解析を重点的に実施することとする. 熱交換器の実験は,小型モデルによる実験および理論解析を昨年度に引き続き実施する.また,同時に,熱交換器の設計のチェックとして2023年度でも実施した粒子法による数値シミュレーションを行い,熱交換器を製作し,加熱粒子による実験を実験室にて実施する. 小型モデルによる実験では,粒子の加熱装置の設置方法等を見直し,加熱に要する時間の短縮や加熱温度の向上を図り,実験の効率化と高精度向上を目指す.また,シェル内の加熱粒子の間を空気を流すための配管の検討を行う.シェル内およびチューブ内の空気の流速,シェル内の粒子温度,チューブ出入口での熱機関の作動流体として用いる空気の温度差との関係から,シェル内の空気流動の伝熱促進効果を明らかにする. 熱交換器での加熱実験では,小型モデルで求めた伝熱促進に関する関係を確認する.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の一人に数値解析に関する協力を依頼していたが,フリーソフト等の使用により使用額が減り,次年度使用額が生じた.
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