研究課題/領域番号 |
22K05020
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
鳥居 肇 静岡大学, 工学部, 教授 (80242098)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 分子間相互作用 / 画像解析 / 電子密度 |
研究実績の概要 |
水素結合系やハロゲン結合系など,凝縮相系における分子間相互作用と分子間構造形成および観測可能量(分光シグナルなど)の変化の相関に関わる事例について,電子密度解析の手法を用いて進めてきた理論研究の発展形として,分子間相互作用を空間分解的に捉えるための汎用的プロトコルを導くことができる可能性を追求する。そのため,典型的と考えられる事例のうち,これまでに扱わなかったものを対象に,追加的な解析を行ったのち,分子間相互作用の各因子に特徴的な電子密度変化を数百メガピクセルの画像パターンとして認識し類型化することにより,その解析プロトコルを導く。さらに,数理最適化の手法を援用して,この手法の自動化を図る。 令和5年度においては,令和4年度に引き続き「典型的な事例の追加的解析」を進めるとともに,「電子密度変化の類型化」に向けた準備をおこなった。前者については,典型的な水素結合性分子の1つであるメタノールの液体について,THzスペクトルのシミュレーションを行うために,分子運動に伴う電子密度の変化を解析し,電子密度変化の様相と分子運動の特徴の相関を明らかにした。また,THz領域に特徴的な振動モードをもつハロゲン結合系を対象に,電子密度をもとに,静電相互作用と分子間電荷移動の相対的重要性を解析した。後者については,これまでに扱った具体的事例を対象に,電子密度変化の画像としての特徴量を抽出するアルゴリズムの検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに,「典型的な事例の追加的解析」と「電子密度変化の類型化に向けた準備」の双方において,進展を得ることができた。前者については,典型的な水素結合性分子の1つについて,解析を進めたところであり,その結果はJ. Mol. Liq.誌に論文として発表した。後者については,これまでに扱った具体的事例を対象に,電子密度変化の画像としての特徴量を抽出するアルゴリズムの検討を行ったところであり,解析をさらに進めるための準備が整いつつあるといえる。このことから,「おおむね順調に進展している」と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
「典型的な事例の追加的解析」については,生体分子内に存在する多様なハロゲン結合供与分子骨格の各々や,ハロゲン結合の重要な類型の1つであるハロニウムイオン系など,さらに対象系を拡げることにより,電子密度変化の類型化のための基礎データを充実させる。そのうえで,汎用的な解析プロトコルの確立に向けて解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
計算サーバに関わる消耗品の一部について,想定より少々長持ちしたものがあったため,次年度使用額が生じた。 生じた次年度使用額は,年度の初期に,予定していた物品の購入のために使用する見込みである。
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