研究課題/領域番号 |
22K05022
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
東 雅大 京都大学, 工学研究科, 准教授 (20611479)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 光捕集アンテナ / 光エネルギー伝達 / 分子シミュレーション / 理論計算 / 超分子複合体 |
研究実績の概要 |
光合成系における最初のステップは、光捕集アンテナと呼ばれるタンパク質による光エネルギーの吸収および反応中心への伝達である。光捕集アンテナは、内部に含まれる色素の励起エネルギーの大きさと揺らぎを適切に制御することで、高効率なエネルギー移動を達成しているが、その詳細はよく分かっていない。本研究課題では、光捕集アンテナから反応中心への高効率な光エネルギー伝達機構を分子論的に明らかにすることを目的とする。本年度は、主に紅色細菌の光捕集アンテナLH2の電子励起状態を解析するための手法開発を行った。LH2はB800とB850と呼ばれる吸収エネルギーの異なる2つの色素リングを内包する。このうち、色素間の間隔が離れたB800については、これまで我々が開発してきた色素の励起エネルギーの大きさと揺らぎを効率的に解析可能な計算手法により、吸収スペクトルを適切に記述できることが明らかになった。一方、色素同士が隣接したB850では吸収スペクトルが再現できず、これまで考慮していた色素の局所励起状態に加えて、色素間の電荷移動状態を考慮する必要があることが明らかになった。そこで、電荷移動状態を取り込むためにハミルトニアンを拡張し、テスト計算を行ったところ良好な結果を得た。今後も引き続き手法開発を進める予定である。また、隣接した色素のポテンシャル関数を効率的に記述可能な計算手法の開発も進めた。隣接した色素の各原子間の距離に対して主成分分析で次元数を削減して誤差を回帰分析することで、小さなモデル系では良好な結果を得た。今後はクロロフィル色素のような大きな系に適用する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、これまで考慮していた色素の局所励起状態に加えて、色素間の電荷移動状態を考慮可能な計算手法の開発を進めた。テスト計算では良好な結果を得ており、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き、色素間の電荷移動状態を考慮可能な計算手法の開発を進める。得られた計算結果を実験スペクトル等と比較しながら妥当性を検証し、エネルギー伝達ダイナミクスの解析に展開する予定である。
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