研究課題/領域番号 |
22K05030
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小板谷 貴典 京都大学, 理学研究科, 准教授 (60791754)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | オペランド分光 / 二酸化炭素 / 不均一触媒反応 / 電気化学 |
研究実績の概要 |
本研究課題では電極触媒表面で起こる反応を赤外反射吸収分光法および硬X線光電子分光法を用いてオペランド観測を行う。得られた実験的知見に基づいて、固―液界面における電気化学反応の反応機構解明を目指す。モデル電気化学反応系として二酸化炭素の電気化学的還元を扱う。二酸化炭素分子は安定であり反応活性化エネルギーが高いため、電気エネルギーなどの外部エネルギーを導入することにより低温で効率的に反応を進行させることができると期待される。本研究では固―液界面における電極触媒反応のオペランド分光測定環境を構築して、電極表面での二酸化炭素分子の還元反応過程の詳細を明らかにすることを目的とする。 本年度は、動作中の電極表面のオペランド測定を可能にするため、液体電解質-電極界面をその場観測できる光電子分光システムを立ちあげた。テスト測定として、硫酸銅水溶液を電解質溶液として用いて、銅の電解析出反応のその場分光測定を実施した。作用電極に印加した状態で測定を行うことで、銅が電極表面に析出する初期過程の光電子分光測定に成功した。 並行して、偏光変調赤外反射吸収分光法を用いて二酸化炭素分子が銅電極表面においてどのように反応するのかを調べた。清浄化した銅表面に二酸化炭素を導入したところ、表面上にはカーボネート(CO3)が生成することが明らかとなった。さらに、二酸化炭素に加えて水素も同時に導入したところ、二酸化炭素の水素化が起こり表面上にフォルメート(HCOO)が生成することも明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は固―液界面で起こる電気化学反応をオペランド観測できる硬X線光電子分光システムを立ち上げ、テスト測定として銅の電解析出反応の測定に成功した。また、銅触媒表面における二酸化炭素の活性化に関しても赤外分光測定を実施している。2つの実験手法を用いて研究および開発が進んでいるため、おおむね順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は電気化学電極反応をオペランド観測できる固液界面光電子分光測定システムの開発を行った。その後、テスト測定として銅の電解析出反応のその場分光測定を実施して、銅析出反応の初期過程の観測に成功した。 本年度は開発したオペランド光電子分光測定システムを活用して、固液界面を反応場とする電気化学反応の実測を行う。今年度からはより高圧気相環境下で光電子分光実験が可能になるように測定系をさらに改良し、気体分子が反応物および生成物として関与する反応系を測定しやすくする。これによって、二酸化炭素の電気化学還元反応のその場光電子分光測定を実現する。気相(二酸化炭素と生成物)、液相電解質、および電極表面の三相界面の光電子分光測定を行うことにより、電極触媒の化学状態分析に加えて、固液界面に形成される電気二重層、および電極近傍から気相に放出される反応生成物の局所分光を目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年8月に所属機関が変わり新たに研究環境を整備する必要性があったため、当初の予算使用計画から変更があった。研究計画自体に変更は無いため次年度以降に使用をしてゆく予定である。
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