研究課題/領域番号 |
22K05034
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
西山 嘉男 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (40617487)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 貴金属ナノ粒子 / 生成ダイナミクス / 過渡回折格子法 |
研究実績の概要 |
本研究では、金属ナノ粒子生成過程の解明とその制御を目指して、バルク溶液とともに 界面での生成ダイナミクスを実時間観測することによって、ナノ粒子生成が反応場の特性に応じてどのように機能するかを明らかにする。 過渡回折格子(TG)法を用いて、バルク水溶液中の銀ナノ粒子生成過程にオキシカルボン酸(グリコール酸、リンゴ酸、クエン酸)が与える効果を検討した。銀ナノ粒子の保護剤として用いられるこれらのオキシカルボン酸は、光還元による反応開始直後に生成する銀二量体カチオンと錯形成することがわかり、錯形成速度はカルボキシル基数に応じて増大(クエン酸>クエン酸>グリコール酸)することが明らかとなった。最終的なナノ粒子生成速度もカルボキシル基の数に応じて遅くなることから、錯形成による安定化がナノ粒子の生成速度を決定する重要な要因となることが示された。また、溶融シリカ表面上での銀イオンおよび光還元剤含有水溶液に紫外光照射を行うことで、時間とともに全内部反射光強度の変化が観測され、生成過程を示唆する結果が得られた。 一方、生成した銀ナノ粒子は短時間かつ高いS/N比でTG測定による粒径計測ができることが明らかになり、これを用いてTG法によるサブマイクロメートルサイズのプラスチック粒子のサイズ評価を試みた。銀ナノ粒子修飾のプラスチック微粒子は元の微粒子の粒径を再現する結果が得られ、銀ナノ粒子がマイクロプラスチックの迅速な粒径評価のプローブとなることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
光還元による金属ナノ粒子生成の固液界面計測に関しては、全内部反射光の変化から生成過程を示唆する結果が得られているものの、当初の見込みよりも測定感度が低く、再現性、定量性には一層の感度向上を必要とする。一方で、バルクでの過渡回折格子測定では銀ナノ粒子生成ダイナミクスに与える配位子の効果を明らかにし、界面計測への基礎的な知見は得られつつある。また、銀ナノ粒子がマイクロメートルサイズの微粒子のサイズ評価に適用できる新たな研究展開への可能性も得られている。
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今後の研究の推進方策 |
固液界面計測に関しては、貴金属薄膜を蒸着するなど、微小領域を検出するための感度向上につながる対策を実施する。バルクでの過渡回折格子測定ではオキシカルボン酸と同様にナノ粒子の保護剤に利用される高分子が配位子として銀ナノ粒子生成ダイナミクスに与える効果を明らかにする。また、銀ナノ粒子を修飾したマイクロ粒子のサイズ計測に関して適用範囲を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度発生した能登半島地震により、多くの研究設備に損害があり、その復旧に相当の時間を費やした。そのため、研究の進捗に支障が生じ、当初行う実験で予定していた検出器や試薬類の購入ができなくなったことで差額が生じた。次年度は、今年度予定していた検出器や試薬類を購入し、貴金属ナノ粒子生成反応の実験を行う。
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