研究課題/領域番号 |
22K05051
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
山崎 鈴子 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (80202240)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | スマートウインドウ / フォトクロミズム / エレクトロクロミズム / ニュートラルカラー |
研究実績の概要 |
様々なドープ量のモリブデンイオンを含む酸化チタンゾルを調製し、フッ素ドープ酸化スズガラス上にディップコーティング後、500℃で焼成して電極を作製した。フォトクロミズムが明瞭に観察できたMo含有量が2 mol%のゾルを用いて作製した電極では、エレクトロクロミズムが観察できなかった。Mo含有量が5 mol%のゾルから作製した電極は、過塩素酸リチウムを電解質に用いた場合に限り、負電位の印加により黒、正電位の印加により透明に戻るエレクトロクロミズムを発現した。しかし、Mo含有量が5 mol%のゾルを透析法で調製すると、コロイドの解膠に2週間を要し、しかも透析後のゾルの粘性が高かったために、ディップコーティングを実施する前に1週間のエイジングにより流動性を上げることが必要であった。エレクトロクロミズムのためのゾルの調製時間の短縮を目的に、透析前のpHの影響を調べた。さらに、MoO3ゾルとTiO2ゾルをそれぞれ別々に調製し、混合することで、Mo-TiO2電極と同様なエレクトロクロミズムが観察できないかを検討した。 その結果、(1)加水分解時のpHを下げることにより、ゾルの解膠を加速化できたが、作製した電極が白濁化する、(2)MoO3ゾルとTiO2ゾルを混合したゾル(混合ゾル)でも、Mo含有量が30 mol%以下において、Mo-TiO2ゾルと同様な黒色へのフォトクロミズムが観察できたが、500℃焼成により作製した電極においてエレクトロクロミズムを示したのは、5 mol% Mo-TiO2ゾルの場合のみであった。混合ゾルを用いて500℃焼成することでMoがドープできるのではないかと期待したが、そのような結果は得られなかった。したがって、解膠などに時間を要してでも、透析法を用いたMo-TiO2ゾルの調製が必要であることが判明した。様々な条件で作製した電極について、電気化学的測定も実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電気化学的測定システムを構築し、エレクトロクロミズムの観察を可能にした。さらに、エレクトロクロミズムに適したMo-TiO2ゾルの調製方法を確立できた。
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今後の研究の推進方策 |
エレクトロクロミズムに最適な5 mol% Mo-TiO2ゾルを用いて電極を作製し、X線光電子分光法による原子価の測定、フラットバンドの測定、コールコールプロットによるキャパシターとしての評価を行う。得られた電気化学的データに基づいて、電極のエレクトロクロミズム性能との関係について考察する。さらに、他の研究グループが報告しているNbイオンドープ酸化チタン電極のエレクトロクロミズムとの比較を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
電極作製のために必要であったスピンコーターを購入せずに、現有物を修理することで使用可能としたため。次年度はインピーダンスの測定が必要なので、そのための機器使用料や部品購入費として使用する計画である。
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