研究課題/領域番号 |
22K05055
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
高田 健司 東京理科大学, 研究推進機構総合研究院, 助教 (90792276)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 配位高分子 / ナノシート / ジチオレン錯体 / 半導体 |
研究実績の概要 |
令和4年度は、逐次的界面錯形成法によるビス(テルピリジン)錯体ナノシートのヘテロ積層体の成長過程を明らかにするとともに、ベンゼンヘキサチオール(BHT)とマンガン(II)イオンを配位子とした配位ナノシートMnBHTの金属交換反応(トランスメタル化)により別の金属種の配位ナノシートに変換できることを見出した。 テルピリジン配位子のジクロロメタン溶液とFe(II)イオン水溶液およびCo(II)イオン水溶液を、互いに交わらない二相界面で逐次的に反応させることで、配位ナノシートヘテロ積層体Fe/Co-tpyを作製した。二層目のCo-tpyの成長過程を反応時間とFe/Co比のから追跡し、反応時間に応じて2層目の厚みが制御できることを見出した。 一方、BHTのジクロロメタン溶液を用いた逐次的界面錯形成法により配位ナノシートヘテロ積層体の作製を試みた。第1の金属イオンとしてMn(II)を用い、第2の金属イオンとしてCu(II)イオンを用いたところ、1段階目の反応で作製したMnBHT中のMnイオンがCuで置換されたtmCuBHTが生じた。そこで、MnBHTを修飾したシリコン基板をCu(II)イオン水溶液に浸漬したところ、SEM/EDS分析により、ほぼ定量的にMnがCuに交換されていることがわかった。さらに、Cu(II)イオンの他Co(II), Ni(II), Zn(II)イオンを用いた場合も効率よくトランスメタル化が進行することを見出した。特にCu(II)イオンへのトランスメタル化は速やかに進行し、濃度が5 mMのCu(II)イオン水溶液を厚みが100 nm程度であるMnBHTに接触させると5分以内に反応が完結することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度においては、テルピリジン錯体を用いた配位ナノシートヘテロ積層体の作製や膜厚制御を達成し、論文発表することができた。また、逐次的界面錯形成法をジチオレン錯体ナノシート作製に適応することで、新たにMnBHTの金属交換反応を見出すことができた。以上の結果は令和5年度以降のジチオレン錯体ナノシートのヘテロ積層体を作製するうえで重要な知見である。従って、研究はおおむね順調に進行していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の結果を踏まえ、令和5年度ではより広範な金属イオンに対するジチオレン錯体ナノシートのトランスメタル化反応性の解明を目指す。トランスメタル化を起こさない金属イオンの組み合わせでは、逐次的界面錯形成法によるヘテロ積層体の構築が可能である。一方、トランスメタル化を起こしやすい金属イオンの組み合わせでは、トランスメタル化が起こる空間をナノシートが金属イオン溶液に接触する表面付近に限定することでヘテロ積層体が構築できると考えられる。濃度、反応時間、温度といったMnBHTのCuへのトランスメタル化条件の検討により、不完全なトランスメタル化が起こる条件を見出だし、ヘテロ積層体の構築を断面方向の元素分析により確認するとともに電気物性や触媒活性などの物性探査を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度には、MnBHTのトランスメタル化反応を見出しその反応性の検討を行ったため、高額な貴金属試薬などの消耗品費や高分解能透過型電子顕微鏡など研究室外の有償共用機器の使用料が当初の想定よりも少なくなり、次年度使用が生じた。 これらの次年度使用額は、令和5年度に行うトランスメタル化反応やヘテロ積層体の合成反応に用いる薬品や物性測定に用いる実験器具の購入のための物品費や、分析に用いる外部共用機器の使用料として用いる予定である。
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