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2022 年度 実施状況報告書

高効率な芳香環の連結反応の開拓を基盤とする固体発光性分子ナノカーボン材料の創成

研究課題

研究課題/領域番号 22K05060
研究機関弘前大学

研究代表者

伊東 俊司  弘前大学, 理工学研究科, 教授 (10213042)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード曲がったπ共役系 / 湾曲ナノグラフェン / ナノカーボン材料 / 固体発光性分子 / 蛍光炭素量子ドット
研究実績の概要

本研究課題は、曲がったπ共役系が示す「溶解度の改善効果」と「効果的なバンドギャップの低減効果」、さらに、フープ状構造の形成による「固体状態でのスタッキングの抑制効果」を基に近赤外領域に高強度の固体発光特性を示す巨大分子ナノカーボン材料の創成を成し遂げようとするものである。本研究課題においては、高効率な芳香環の連結反応の開拓と共に、(1)歪の誘起により溶解度が確保された巨大な芳香環の構築を経て巨大なフープ状のπ共役系空間を構築、また、(2)5員環や7員環の奇数員環の導入による曲面構造を持った湾曲ナノグラフェンの構築や(3)ヘリセンのように湾曲させたナノグラフェンの構築を基に、蛍光炭素量子ドットとして機能し得る「近赤外領域で高強度の固体発光特性を示す巨大分子ナノカーボン材料の創成」を試みる。
本研究課題の初年度においては、近赤外領域に高強度の固体発光特性を示す巨大分子ナノカーボン材料の創成の課題解決に向け、特に、(3)のヘリセンのように湾曲させたナノグラフェンを基に、その曲面構造を利用して「CNTセグメント様のπ共役系空間」の構築を検討した。これまでにヘリセン構造を含むメビウス型のπ共役系構造の形成に成功しているが、共役の効果が立体的に不利なためか、顕著なメビウス型のπ共役系の効果が確認されてこなかった。そこで、基本骨格と間にアセチレン構造を導入する試みに研究を発展させた。また、形成されたフープ状構造や湾曲ナノグラフェン等へ酸化還元活性な電子供与能や電子求引能を持った芳香環の導入に向け、多彩な光・電子応答機能を有するアズレン誘導体の連結を可能とするヘテロ芳香環を配向基とするアズレン環の高効率な1,3位選択的パラジウム触媒C-H活性化反応における高効率化の検討を進めた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

曲がったπ共役系が示す「溶解度の改善効果」と「効果的なバンドギャップの低減効果」、さらに、フープ状構造の形成による「固体状態でのスタッキングの抑制効果」を基に近赤外領域に高強度の固体発光特性を併せ持つCNTセグメント様の巨大な分子状のナノカーボン材料の創成を成し遂げようとするものである。
初めに、「高効率な芳香環の連結反応の開拓」については、ヘリセンのような湾曲ナノグラフェンの曲面構造を利用したフープ状構造(メビウスカーボンナノフープ)の構築についての検討を進めた。本研究の開始以降、π共役系に表裏のないメビウス型のπ共役系空間として、ヘリセン構造を持ったπ共役系空間に注目が集まっている。しかしながら、ヘリセン部位と連結するポリフェニレン骨格の立体障害より共役の効果が著しく低下していることが予想された。そこで、基本骨格と間にアセチレン構造を導入する試みに研究を発展させた。さらに、リングサイズの効果の検討など多様な側面からの検討に研究を展開していきたい。また、新たに8の字型に環状構造を形成することにより、歪を含み共役の効果の向上を合わせもつ湾曲ナノグラフェン構造の構築の検討を行った。また、形成されたフープ状構造や湾曲ナノグラフェン等へ酸化還元活性な電子供与能や電子求引能を持った芳香環の導入に向け、多彩な光・電子応答機能を有するアズレン誘導体の連結を可能とするヘテロ芳香環を配向基とするアズレン環の高効率な1,3位選択的パラジウム触媒C-H活性化反応における高効率化の検討を進め、反応性が低いアリール臭化物で良好に反応が進行する反応条件の開拓に至った。

今後の研究の推進方策

ヘリセンのような湾曲ナノグラフェンの曲面構造を利用したフープ状構造(メビウスカーボンナノフープ)の構築については、これまでに低収率ながらフープ状構造の構築に成功しているものの、物性の詳細な検討に必要とされる十分な量の環状化合物の合成には至っていない。また、ヘリセン部位と連結するポリフェニレン骨格との立体障害により共役の効果が著しく低下していることが予想されている。そこで、基本骨格と間にアセチレン構造を導入する試みにも研究を発展させた。さらなる反応条件の検討を進め、目的のアセチレン構造が導入された環状化合物とアセチレン構造を含まない環状化合物の十分な量の合成を達成したい。さらに、8の字型の環状構造の形成などを含めて、多様な側面からの検討に展開していきたい。
歪の誘起により溶解度が確保された巨大な芳香環の構築を経て巨大なフープ状のπ共役系空間の構築、また、5員環や7員環の奇数員環の導入による曲面構造を持った湾曲ナノグラフェンの構築を経た湾曲させたナノグラフェンの構築については、基本骨格となる歪が誘起された巨大な芳香環の構築、5員環や7員環の奇数員環の導入による曲面構造を持った湾曲ナノグラフェンの構築より研究を進めていきたい。
さらに、形成されたフープ状構造や湾曲ナノグラフェン等への酸化還元活性な電子供与能や電子求引能を持った芳香環の導入に向け、多彩な光・電子応答機能を有するアズレン誘導体の連結を可能とするヘテロ芳香環を配向基とするアズレン環の高効率な1,3位選択的パラジウム触媒C-H活性化反応における高効率化の検討を進め、複数のアズレン誘導体を共役鎖で連結した化合物群の合成を行うと共に、論文として報告することで社会への還元を進めていきたい。

次年度使用額が生じた理由

合成研究を主体とする本研究課題の推進には、研究期間を通して消費される実験用器具類ならびに合成用試薬に関する物品は必要不可欠なものである。特に合成用試薬については、研究の進捗状況に合わせて効率よく準備していくことが必須である。令和4年度においては、研究の進捗状況に合わせて実験用器具類ならびに合成用試薬等で経費を効果的に執行していった結果、当初見積額から予算を繰り越すことになった。令和5年度においては、3年間の本研究課題の第2年次として、繰越予算も含めて効率よく執行することで効果的に本研究課題の目的の達成に努めたい。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] Highly efficient azulene ring-bonding reaction using Pd-catalyzed C-H activation reaction2022

    • 著者名/発表者名
      萩尾周平・伊丹脩人・伊藤雄大・関口龍太・伊東俊司・川上 淳
    • 学会等名
      令和4年度化学系学協会東北大会

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公開日: 2023-12-25  

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