研究課題
令和5年度は、まず、アズレニル-4-カルボン酸の脱カルボニルボリル化反応を用いて、湾曲分子の骨格形成に必要な4-ボリルアズレンの簡便合成法を確立した。この反応は、6-ボリルアズレンの合成にも適用することができた。これらのボリルアズレンは、CuIとの反応により相当するヨードアズレンへ誘導することができた。また、4-ボリルアズレンと4-ヨードアズレンのSuzukiカップリングにより、4,4'-ビアズレンを合成することに成功した。単結晶X線構造解析により、2つのアズレニル基はおおよそ直交していることと、キラル晶であることを明らかにした。7員環部間の立体的混み合いに基づく回転障害により軸不斉が発現し、ラセミ化障壁は1,1'-ビナフチルと同等であった。次に、アズレニルホウ素化合物からアズレニルビスマス誘導体を合成する反応を検討した。芳香環への典型元素導入反応としてリチオ化が広く知られている。これをアズレン誘導体に適用する場合、アズレニルリチウムが有用な反応中間体となる。しかし、基質となるアズレン誘導体の7員環部の高い求電子性により求核付加反応が副反応として起こる場合や、アズレニルリチウムが非常に不安定で発生が困難な場合がある。したがって、リチオ化を経由せず、アズレン骨格へビスマスなどの典型元素が導入できれば、有用な方法となる。今回、直接ボリル化を用いてアズレン骨格に導入したホウ素がビスマスにトランスメタル化される反応を見出した。
2: おおむね順調に進展している
湾曲分子の前駆体となるボリルアズレン化合物の合成法を開発し、この化合物を用いて有用なビアズレン誘導体の合成とX線結晶構造解析にも成功した。また、ホウ素化合物のトランスメタル化を利用して有機ビスマス化合物に変換できる非常に有用な方法論を開発した。これらの成果は、目的とする分子の合成を達成するための有用な方法論として利用できる。以上により、上記区分に該当すると判断した。
今回合成した有用な前駆体と新たに見出した方法論を用いて目的分子の合成を速やかに達成し、分子構造を単結晶X線構造解析により明らかにするとともに、物性を評価する。
(理由)購入した試薬が予定よりも安価に購入できたため。(使用計画)合成実験に必要な消耗品の購入に使用する。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
Chemistry A European Journal
巻: 30 ページ: e202400098
10.1002/chem.202400098