研究課題/領域番号 |
22K05073
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
和泉 博 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (20356455)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ディープラーニング / 立体配座 / SARS-CoV-2 / タンパク質 / IUPAC命名法 / 機能性有機分子 / 分子構造コード化構造検索 / 超二次構造 |
研究実績の概要 |
1)生体分子ディープラーニング解析システムの開発 SARS-CoV-2多重変異株であるオミクロン株はデルタ株と異なり、肺に起因する重症度例が少なくなっており、カテプシンが関与するエンドサイトーシスにより感染が進行すると考えられている。しかしながら、なぜオミクロン株BA.1亜型はフーリン切断配列を持つのにS1/S2サブユニット切断が起こりにくくなっているのか、いかに原形質膜融合を経由しないのに効果的にウィルスが生成されるのか未だよくわかっていない。その解析に適用するため、まず、立体配座可変性予測システムSSSCPredsの変換結果の配列マップ及び分子モデル上マップを作成するソフトウェアを開発した。 解析から、N679K変異によりS1/S2切断後オミクロン株のみC末端がαヘリックス型配座でrigidになっており、BA.1亜型では切断のための活性化エネルギーが高くなっており、切断が起こりにくくなっていること、rigidになることによりNeuropilin-1とより相互作用しやすくなっていると考えられることが明らかとなった。さらに、立体配座可変性はウィルス変異株の熱力学的安定性と相関しており、夏、冬にエピデミックを起こす変異株について、亜型を含めてこの立体配座可変性により区別できた。このことから、SSSCPredsが季節、地理的変動性をトレースするための生物地球化学的解析ツールとしても利用できることがわかった。 さらに、ウィルスによりアミノ酸残基100未満のペプチドも発現されることから、SSSCPredsの構築と同様な方法を用いて、アミノ酸残基50以上の予測2種類、アミノ酸残基20以上の予測1種類のディープニューラルネットワークシステムをもつPepPredsを構築し、ORF6、ORF7a、ORF8、ORF10、ORF14等の立体配座可変性予測を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1.生体分子ディープラーニング解析システムの開発において、ディープニューラルネットワークを用いたSSSCPredsの予測結果を立体配座可変性予測マップに変換するプログラムを今年度構築した。これにより、予測した立体配座可変性と変異株の季節変動性が相関すること、さらにはBA.2.75、XBB、BQ.1.1、XBB.1.5など地理的にエピデミックを起こした亜型をトレース可能であることを見出した。その結果が論文として認められ、実社会への活用可能性を示せたことから、達成度として①と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
精度の高い共通部分構造(MCS)を有する大量の構造データに応用するために、1)生体分子ディープラーニング解析システムの開発に関して、RNA分子の3D記述子の開発を行うとともに、ディープラーニングに適用可能か精査を進める。また、タンパク質立体配座可変性予測システムについて、薬剤耐性菌のアミノ酸変異への適用可能性を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
オミクロン株の変異に関する研究成果についてオープンアクセス論文発表を優先する必要があり、1)生体分子ディープラーニング解析システムの開発に関して、他の生体分子に向けたシステムの構築を後回しにした関係で次年度使用が生じた。ディープラーニングシステムやオープンアクセス論文発表への使用を予定している。
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