研究課題/領域番号 |
22K05074
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター |
研究代表者 |
三柴 健太郎 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 研究開発本部機能化学材料技術部マテリアル技術グループ, 副主任研究員 (90826877)
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研究分担者 |
永田 晃基 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 研究開発本部物理応用技術部電気技術グループ, 副主任研究員 (40733754)
田中 裕也 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (90700154)
飯野 裕明 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (50432000)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 有機ホウ素化合物 / 有機エレクトロニクス / アルキニルボラン / 有機半導体 / 電子輸送材料 |
研究実績の概要 |
有機ホウ素化合物"有機ボラン"は、有機エレクトロニクスに不可欠な電子輸送材料への活用が期待されている。その中で我々は、アルキニル基(C≡C)がホウ素原子に結合した有機ボラン"アルキニルボラン"に注目し、その物性解明を行ってきた。特に、アセン環と呼ばれる平面状分子構造とアルキニルボラン骨格を組み合わせた独自の分子構造は、これまでに電子輸送材料として優れたポテンシャルを有することが示されており、革新的な新奇材料に成りえる可能性がある。本研究の目的は、アルキニルボラン化合物のキャリア輸送特性を明らかにし、優れた新奇含ホウ素電子輸送材料を創発することである。具体的には、前述のアルキニルボラン化合物の分子構造と電子輸送特性の相関を見出すことで最適な分子設計指針を示す。 前年度は代表的なアセン環であるアントラセンの9位にジメシチルボリルエチニル基を導入した誘導体を複数種類合成し、その単結晶X線構造解等を行った。2023年度はこれに続いて、合成した各誘導体の熱物性、電子構造、キャリア移動度を実験的に評価した。その結果、アントラセン2位もしくは10位に置換基としてフェニル基を導入すると、電子構造を大きく変えることなくガラス転移温度、結晶化温度、融点を大きく向上させられることが明らかになった。また、その過程でサンプルの融解→急冷操作により容易に当該誘導体の非晶質膜を調製できることを見出した。各誘導体非晶質膜の電子構造は電子輸送材料として十分機能するHOMO:-6.1 eV/LUMO:-3.7 eVであることを確認した。また、非晶質膜中における電子移動度は、アントラセン環上のフェニル基の有無および位置に大きく依存することがTOF法により示された。なかでも、アントラセン10位にPh基を導入した誘導体は非晶質系材料として非常に高い電子移動度~10^-3 cm^2/Vsを示すことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度準備した機材を使用して物性評価を順調に進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
融解/急冷により得られる非晶質膜に続き、2024年度は蒸着膜についても膜質、電子移動度を明らかにする。これらの結果から分子構造と電子輸送特性の相関を見出し、最終的に電子輸送材料として最適な分子設計指針を示す。
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次年度使用額が生じた理由 |
物性評価に関わる消耗備品の使用を予想より抑えられたため。一方で、2024年度は実験頻度増加と円安による備品価格上昇に対応するため差額分を使用する。
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