研究課題/領域番号 |
22K05082
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
奥島 鉄雄 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 准教授 (60359924)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | ポルフィリノイド / アザナノグラフェン / 芳香族化合物 / 結晶構造 / 分光特性 / 電子構造 |
研究実績の概要 |
ポルフィリノイドの周辺部位に芳香環を縮環させ、湾曲構造を有するアザナノグラフェン類を創出することを目的とし、段階的前駆体法を用いたπ拡張ポルフィリン類の合成を行った。構造、芳香族性、電気化学的および分光化学的特性との相関を理論的、且つ実験的に検証し、包括的に理解することを目指した。 熱変換型前駆体法を用いて、ベンゾ部分にフェニル基、チアナフチル基、およびナフチル基を有するベンゾポルフィリンの合成に成功した。オクタフェニルテトラベンゾポルフィリンの分子内Scholl反応により、テトラフェナントロポルフィリンを合成した。X線結晶構造解析により、ポルフィリン平面のひずみと周辺部の部分らせん構造を明らかにした。キラルカラムによる分割を試みたが単離することはできなかった。吸収スペクトルおよびMCDスペクトルの測定、分子軌道計算により、電子構造を明らかにした。熱変換前駆体法を用いて、フェニルベンゾポルフィセンの合成も検討した。選択的にフェニル基を導入したビスイソインドール骨格の構築条件を検討した。π拡張BODIPYおよびBOPHY類、コロール類や環拡張ポルフィリンを合成し、その構造、分光特性、および発光特性を明らかにした。今後は、分子内Scholl反応による縮環反応を検討し、構造の湾曲化を目指す。分子の骨格と共役拡張、吸収波長の関係を、吸収スペクトルやX線結晶構造解析、MCDスペクトルの測定およびTD-DFT計算を用いて芳香族性や電子構造の考察から明らかにした。 これらの成果について4件の論文を投稿し、4件の学会発表(ポスター発表)、2件の招待講演(国際学会)を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フェニルベンゾポルフィリンの縮環反応によるフェナントレン縮環ポルフィリンへの変換までは当初の予定通りに合成を進めることができた。X線結晶構造解析により、ポルフィリン平面のひずみと周辺部の部分らせん構造を明らかにした。キラルカラムによる分割を試みたが単離することはできなかった。吸収スペクトルおよびMCDスペクトルの測定、分子軌道計算により、電子構造を明らかにした。このほか、アリールベンゾポルフィリンの合成、およびコロール類、π拡張BODIPYおよびBOPHY類、環拡張および核置換ポルフィリン類の合成も順調に進めることができた。ポルフィセン類の合成は、反応条件の検討を進めている。得られたポルフィリノイドについて、分子の骨格と共役拡張、吸収波長の関係を、吸収スペクトルやX線結晶構造解析、MCDスペクトルの測定およびTD-DFT計算を用いて芳香族性や電子構造の考察から明らかにした。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)フェナントロポルフィリンについて、2段階目のScholl反応を検討し、サーカム型ポルフィリンを合成する。また、チアナフテンやナフタレンのような2環型芳香族の導入を進め、7員環や5員環構造を含む湾曲程度の異なるサーカム型ポルフィリンを合成する。 (2)環拡張・縮小、核置換および異性体ポルフィリンを中心骨格に導入して、種々の湾曲型ポルフィリノイドを合成する。 (3)BODIPYやBOPHYのような含ピロール蛍光色素などの複素環化合物を導入する。ベンゾテトラセン縮環BODIPY、ジベンゾヘプタセン縮環bisBODIPY、フェナントレン縮環BOPHYなどを合成する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
残額12,024円が残った。3月末の日本化学会春季年会の旅費として9-10万円程度を見込んでいたが、8万円程度に抑えることができたため、1万円が残った。学会時期が3月末のため、消耗品等の購入を年度内に処理することができない。そこで、次年度に繰り越し、所望品等の購入で使う予定にした。
|