研究実績の概要 |
複雑な構造を有する含窒素生物活性化合物や機能性材料の効率的な合成のために、新規ドミノ反応の開発は、今なお強く求められている。研究代表者は、α,β-不飽和イミンへの1,4-付加反応を含むドミノ反応により、様々な含窒素ヘテロ環合成法を開発している。本研究では、不飽和結合を二つ有するα,β,γ,δ-不飽和イミンを求電子剤に用いた新規ドミノ反応の開発を目的とする。具体的には、一つ目の求核剤のケテンシリルアセタール(KSA)、またはケテンシリルチオアセタール(KSTA)が1,4-付加して生成した高反応性中間体イミノシクロブテノン、またはイミニウム塩へ、第2番目の異種求核剤を連続付加させることによって多官能基を有する含窒素合成中間体を得る。さらに、得られた合成中間体の官能基変換によって、生物活性化合物や機能性材料の基本骨格である含窒素ヘテロ環化合物を合成する。令和4年度は、α,β,γ,δ-不飽和イミンの代わりにブロモ基を有するα,β-アルキニルイミンに対し、カリウムヘキサメチレンジシラジド(KHMDS)存在下、フェニルメチレン保護基を有する2-アミノマロン酸エステルを共役付加させた後、脱保護を行うことにより、3-アミノ-4-(2-ブロモフェニル)-2-ピリドンを得ることに成功した。芳香環上に電子供与、求引基、ヘテロ環を有する際も目的の3-アミノ-2-ピリドンを得ることに成功した。得られた3-アミノ-4-(2-ブロモフェニル)-2-ピリドンに対し、パラジウム触媒を用いた分子内アミノ化反応を行い、2,3-二置換β-カルボリン-1-オンを得ることに成功した。また、ジアルキニルケトンに対して5 mol%のスカンジウムトリフラート存在下、求核剤としてケテンシリルアセタールを作用させることでドミノ1,4-付加反応が進行し、様々な置換基を有する多置換δ-ラクトンが得られることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ジアルキニルイミンに対してスカンジウムトリフラート存在下、求核剤としてケテンシリルチオアセタールを作用させることでドミノ1,4-付加反応が進行し、多置換δ-ラクタムが得られることを見出したのに続き、α,β,γ,δ-不飽和ケトンにおいても求電子剤にケテンシリルアセタールを用いた新規ドミノ反応の開発に成功し、様々な置換基を有する多置換δ-ラクトンが得られることを明らかにすることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度以降は、令和4年度に得られたα,β,γ,δ-不飽和ケトンの新規ドミノ反応の知見をもとに、当初計画していたα,β,γ,δ-不飽和イミンを求電子剤に用いた新規ドミノ反応の開発を目的とし、一つ目の求核剤のケテンシリルアセタール(KSA)、またはケテンシリルチオアセタール(KSTA)が1,4-付加して生成した高反応性中間体イミノシクロブテノン、またはイミニウム塩へ、第2番目の異種求核剤を連続付加させることによって多官能基を有する含窒素合成中間体を得る。さらに、得られた合成中間体の官能基変換によって、生物活性化合物や機能性材料の基本骨格である含窒素ヘテロ環化合物の合成を検討する。
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