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2022 年度 実施状況報告書

P-キラル光学活性リン化合物を導く高効率高選択的連続反応の開発

研究課題

研究課題/領域番号 22K05109
研究機関岐阜大学

研究代表者

村井 利昭  岐阜大学, 工学部, 教授 (70166239)

研究分担者 布施 新一郎  名古屋大学, 創薬科学研究科, 教授 (00505844)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードP-ホスホン酸エステル / チオホスホン酸エステル / キラリティー転写反応 / ビナフチル基
研究実績の概要

少なくとも二つのヘテロ原子置換基を有するP-キラルな有機リン化合物は、重要な化合物群の一つである。そこで本研究では、キラリティー転写反応さらにリン原子上での置換反応を行い一連の化合物群を導く新反応を開発した。以下詳細である。
原料合成:ビナフチル基を有するリン酸クロリドおよびチオリン酸クロリド、セレノリン酸クロリドを合成し、種々のアルコキシ基を有するリン酸エステル、チオリン酸エステルおよびセレノリン酸エステルを良好な収率で合成できた。
キラリティー転写反応:リン酸エステルおよびチオリン酸エステル、セレノリン酸エステルに対して、キラリティー転写反応を行い、塩基による反応性と立体選択性を比較した。その結果、ナトリウム塩を用いるとすべて反応は進行した。またセレノリン酸エステルのキラリティー転写反応における立体選択性は酸素や硫黄の場合と比較して低下した。チオリン酸エステル酸エステルと種々のアルコールとを反応させ、単一のジアステレオマーとしてチオリン酸エステルを得ることができた。X線結晶構造解析より、生成物のリン原子上の立体化学はS配置だった。エトキシ基を有するリン酸エステルと、シクロヘキサノールとの反応は良好に進行し、対応するリン酸エステルを単一のジアステレオマーとして得た。シクロヘキシル基を有するリン酸エステルとエタノールとの反応も良好に進行し、対応するリン酸エステルを単一のジアステレオマーとして得た。すなわちアルコキシ基を付加させる順番を替えることにより、それぞれ逆のジアステレオマーを高い立体選択性で得ることができた。
リン原子上での置換反応:エトキシ基とシクロへキシル基を有するリン酸エステルと3-フェノキシベンジルアルコールとの反応により対応するリン酸エステルを高収率、高い立体選択性で得た。また、ビナフチル基、リン原子上の立体が逆の場合でも対応するリン酸エステルを得た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

リン原子上に三つの異なる置換基を有するP-キラルな化合物群は、医薬品や医薬品前駆体として広く用いられている。ただしそれらの化合物を導く反応は、多段階を要するとともに、反応条件の正確な制御も必要であること、反応途中で同じ置換基が組込まれる反応が優先することも多く、導入できる置換基は限定的である。そこでリン原子上に三つの異なる置換基を選択的に導入できる反応の開発は有機合成化学における重要な課題の一つである。このような背景の中われわれは、ビナフチル基を有するリン酸誘導体に関する研究を展開してきた。ここではこのリン酸誘導体に対して、酸素求核剤を反応させることによって、リン酸誘導体に含まれる二つのP-O結合のうち一方のみを選択的に開裂し、酸素求核剤を導入する反応条件の最適化を行った。その結果、酸素求核剤を導入する際には、ナトリウムアルコキシドを用いると反応が良好に進行し、高い立体選択性を示すことを明らかにすることができた。さらに得られた生成物に残ったもう一つのP-O結合の切断に伴う二つ目の酸素求核剤の導入反応の条件最適化も行い、用いる酸素求核剤は限定的ではあるものの、リン原子上に、三つの異なるアルコキシ基を導入することに成功した。さらにキラリティー転写反応の立体化学を、生成物の立体構造をX線構造解析により明らかにすることによって、決定することにも成功した。これらのことから本研究は、おおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

リン原子上に導入する三つの異なる置換基としては、三つの異なるアルコキシ基、あるいはそのうち一つまたは二つを炭素置換基や窒素置換基で置き換えた誘導体を描くことができる。さらに三つの異なる炭素置換基を導入した誘導体も存在する。これまで、一つのアルコキシ基と二つの異なる炭素置換基を導入した化合物さらに異なる三つのアルコキシ基を導入した化合物を導く新反応の開発に成功している。さらにこの系を発展させて、別のタイプの置換基の組合せでも光学活性なP-キラル化合物を導くことができる反応開発を行う。その際、ヘテロ原子あるいは炭素求核剤が有するカウンターカチオンが鍵となる。アルコキシドではリチウム、ナトリウムあるいはカリウムイオンを、炭素求核剤では、リチウムあるいはマグネシウムを有する反応剤を利用して、条件最適化を行う。

次年度使用額が生じた理由

出席・発表を予定していた国際会議(International conference on heteroatom chemistry)がコロナ対応のために、2024年に延期されたため、これに関する旅費が節約できた。またこれまでに研究室で利用していたガラス器具類の補充をすることもなかったため、節約できた。
2023年度は、これらと2023年度に与えられる助成金を合わせて、ガラス器具やスターラー、加熱装置などを購入し、研究を継続する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Two-Step Transesterification of Phosphates, Phosphorothioates, and Phosphonates with a Binaphthyl Group for the Synthesis of P-Chirogenic Phosphates and Phosphonates2023

    • 著者名/発表者名
      Endo, C.; Inoue, Y.; Maruyama, T.; Minoura, M.; Murai, T.
    • 雑誌名

      Synthesis

      巻: 55 ページ: 934-944

    • DOI

      10.1055/a-1948-3003

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 5-N-Arylaminothiazoles with Pyridyl Groups and Their first-row Transition Metal Complexes: Synthesis, Photophysical Properties, and Zn Sensing2022

    • 著者名/発表者名
      Pamungkas, K. K. P. Maruyama, T.; Murai, T.
    • 雑誌名

      RSC Advances

      巻: 12 ページ: 14698-14706

    • DOI

      10.1039/d2ra01694j

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Axis-to-center Chirality Transfer Reaction of Organophosphorus Compounds with a Binaphthyl Group as a Key Process Leading to the Formation of P-Chirogenic Derivatives2022

    • 著者名/発表者名
      Murai, T.
    • 学会等名
      International Congress on Pure & Applied Chemistry 2022
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2023-12-25  

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