研究課題/領域番号 |
22K05115
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
菅 誠治 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 教授 (50291430)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | トリメチルシリルシアニド / 電解反応 / 酸化 / 還元 |
研究実績の概要 |
シアノ基は多様な官能基へと変換できることから、有機化合物への導入反応は極めて重要である。本研究では、KCNなどに比べて毒性が低く、有機溶媒に可溶で使いやすい、マイルドなシアノ化剤であるトリメチルシリルシアニド(TMSCN)を用いた反応に着目し、電気化学的な「酸化」および「還元」を駆動力とする新規なシアノ化反応の開発を目的として研究を推進している。 具体的には、①ヘテロ原子を持つ電子豊富な基質とTMSCNを共存させて電解酸化を行う反応(酸化的アプローチ)、および、②TMSCNの電極還元により生じるアニオンラジカルと各種求電子剤の反応(還元的アプローチ)を基軸とするシアノ化をターゲットとして研究を行った。 ①の酸化的アプローチとしては、昨年度見出したイソクロマン類とTMSCNの共存下での電解酸化によるイソクロマンC1位のシアノ化反応について、引き続き検討を行った。基質一般性についての調査を行い、多様なイソクロマン類を基質として使用できること、および、電解酸化で生じるカチオン中間体をNMRで観測することにも成功した。 ②の還元的アプローチでは、触媒量の電気量(電極還元)により駆動するイミンに対するTMSCNの付加反応(Strecker型反応)の検討を行い、アルジミンのみならず、ケチミンでも目的生成物が効率よく得られることを見出した。さらに、前者を用いた場合には、フロー系でも反応が効率よく進行することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記①のイソクロマン類とTMSCNを共存させた条件での直接電解酸化によって、多様なイソクロマンC1位のシアノ化が効率よく進行することを見出したことは非常に意義深い。また、TMSCNを共存させない条件で、電解酸化を行うことにより、反応中間体であると予想されるカチオン中間体がNMR測定で直接観測できたこと、さらには、この際、支持電解質の選択が中間体の安定性を左右し、反応効率に大きく関わることがわかったことは大きな発見であった。②の触媒量によるイミンとTMSCNの反応では、アルデヒド由来のイミン(アルジミン)だけでなく、ケトン由来のイミン(ケチミン)でも反応が進行したことも意義深いと考えている。以上のように、研究は計画通り順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
上記①と②については、研究がほぼまとまってきたので、現在論文投稿の準備の段階に入っている。 この研究の大事な点の一つはTMSCNの酸化耐性にある。現在、この性質を利用して、「求電子的なシアノ化剤」の簡便合成法に取り組んでいる。TMSCNは求核的なシアノ化剤であるが、この化合物の極性を転換させて、求電子的なシアノ化剤に導くことができれば、非常に意義深い。予備検討の結果、TMSCNを出発原料に用いることにより、数種の求電子的なシアノ化剤が合成できることがわかってきた。当初の計画は概ね順調に進んでいるので、最終年度は発展的にこの研究にも取り組みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画が順調に進んだので、上記のように発展的な課題(「求電子的なシアノ化剤」の簡便合成法)を追加設定して、併せて検討を行っている。TMSCNの非常に興味深い化学的性質を探究するために最終年度に予算を少し繰り越して、この研究にも注力するために、次年度使用が生じた。
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