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2023 年度 実施状況報告書

反芳香族配位子を用いた金属錯体触媒の開発と反応性解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K05117
研究機関九州大学

研究代表者

小出 太郎  九州大学, 工学研究院, 助教 (60771920)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード反芳香族配位子 / 金属錯化 / 酸化還元 / 触媒反応
研究実績の概要

本年度中には、合成した反芳香族配位子を用いた金属錯体の合成に取り組むとともに、芳香族金属錯体からのニ電子還元を利用した反芳香族金属錯体の生成を利用した触媒反応について研究を行った。
金属錯化については、主に第4周期の遷移金属の塩を用いて反応を試みた。グローブボックス中で吸収スペクトル変化を伴う錯化挙動が観測されたが、その後脱メタル化しながら配位子が酸化された芳香族性の化合物が得られた。これは金属錯体になった後に配位子の酸化、もしくは配位子から金属への電子移動によって電子状態が変化し、結果として配位力がなくなり脱メタル化しているものと考えられる。
そこで、芳香族金属錯体を用いて、電気化学的に配位子を二電子還元して反芳香族錯体として系中で利用することを考えた。これは、本研究で用いている金属錯体が中心金属よりも配位子還元が起こりやすいことを利用した手法であり、ニ電子還元体であるジアニオンが反芳香族性になることは電解吸収スペクトルから確認し、理論計算からも支持する結果を得た。
電気化学還元条件下で反応を行うことで、反芳香族性のニ電子還元体を触媒活性種として反応が進行し、水素発生反応や二酸化炭素固定反応が進行することが分かった。詳細な反応機構については今後の検討課題であるが、中心金属の価数ではなく配位子の電子状態を変えることで反応が進行することから、芳香族と反芳香族をスイッチングできる配位子が触媒反応にも有用であることが示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

反芳香族錯体の単離は難しいものの、不活性ガス下での錯化挙動は観測できた。また、酸化還元活性な環状共役配位子を利用することで電気化学的に反芳香族金属錯体を発生させて利用することができるという知見を得た。触媒反応における配位子還元体(反芳香族錯体)の利用は、新たな触媒反応デザインの手法の一つとなりうる。

今後の研究の推進方策

引き続き金属錯化と錯体の反応性についての検討を行う。 特に反芳香族配位子からの金属錯化については、生成物が安定に単離できる錯体の合成を目指す。配位子の構造(ヘテロ原子の種類や数、導入位置)、金属の種類、反応条件の検討に加え、配位子への置換基導入も行う。配位子に電子求引性置換基を導入することで錯化後の配位子から金属への電子移動を抑制できると思われるが、それは同時に錯体自体の反応性(触媒性能)の低減にもつながってしまう可能性がある。単離できたら構造決定および反応性について検討する。
芳香族錯体からの電気化学的還元手法については、さらに検討を行うこととし、還元時の電子状態については、電解吸収スペクトルと電解ESR、理論計算を合わせた解析をさらに行うとともに、触媒反応における反応中間体や遷移状態の予測も行う。
また、化学還元剤による還元と反芳香族錯体の単離・同定を行い、得られた錯体を用いた触媒反応と、芳香族錯体からニ電子還元を経由して起こる電気化学条件の反応について比較を行う。

次年度使用額が生じた理由

試薬類について進捗に合わせて必要な物品が変わったことと、当初予定していた学会への参加が難しかったため。
次年度、消耗品費および学会参加費として使用する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)

  • [雑誌論文] Storing electrons from H2 for transfer to CO2, all at room temperature2023

    • 著者名/発表者名
      Daiki Shimauchi, Takeshi Yatabe, Yuka Ikesue, Yuu Kajiwara, Taro Koide, Tatsuya Ando, Ki Seok Yoon, Hidetaka Nakai, Seiji Ogo
    • 雑誌名

      Chemical Communications

      巻: 59 ページ: 14795-14798

    • DOI

      10.1039/d3cc05285k

    • 査読あり
  • [雑誌論文] H2-driven reduction of CO2 to formate using bacterial plasma membranes2023

    • 著者名/発表者名
      Mohammad Moniruzzaman, Hung Khac Nguyen, Yu Kiyasu, Takumi Hirose, Yuya Handa, Taro Koide, Seiji Ogo, Ki Seok Yoon
    • 雑誌名

      Bioresource Technology

      巻: 390 ページ: 129921

    • DOI

      10.1016/j.biortech.2023.129921

    • 査読あり

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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