研究課題
本年度はまず,合成法の限られていたビニルケテンイミン鉄錯体の簡便合成法の検討を行った。その目的で,1級アミンと4塩化チタンを混合し,加熱することによって調製されるチタンアミドを用いることを考えた。様々な条件,当量比で1級アミンと4塩化チタンを混合し,チタンアミドを調製する検討を行った。その結果,市販の1級アミン4当量と4塩化チタン1当量を混合し加熱すると,反応性の高いチタンアミドが調製できることが分かった。この場合,利用できる1級アミンは,直鎖・分岐鎖を持つ脂肪族アミン及び,アニリン類があげられる。このチタンアミドを用いると,ビニルケテンイミン鉄錯体へと変換できることを見出した。用いるビニルケテンイミン鉄錯体について検討したところ,この反応は十分な化合物一般性を有していることも明らかとなった。さらに,アミンとしてヒドラジンを用いると,ビニルケテンヒドラゾン鉄錯体の合成が実現できることを見出した。ビニルケテンヒドラゾン鉄錯体はこれまでに報告例がなく,本手法の特徴のひとつである。この結果は,J. Organomet. Chem.誌に投稿したところ,受理されすでに論文誌に掲載されている。さらに,合成したビニルケテンイミン鉄錯体と様々な求電子剤との反応について検討を行った。その結果,求電子剤として,ベンゾキノンを用いた場合に,反応が進行することを見出した。生成物については構造が明らかになっていないので,今後構造決定を行う。
2: おおむね順調に進展している
当初の目的の一つであったビニルケテンイミン鉄錯体の簡便合成法の開発に成功し,論文として発表することができた。また,ビニルケテンイミン鉄錯体が反応する求電子剤としてベンゾキノンを見出した。生成物の構造を明らかとでき,化合物一般性等が検討できていれば,さらなる評価も可能であったがそれが行えていないので,この評価とした。
ビニルケテンイミン鉄錯体とベンゾキノンが反応した生成物の構造決定とその化合物一般性の検討を行う。同時に,ベンゾキノン以外の求電子剤についても検討を行う。
試薬代を1000円単位で合わせるのが難しく,1000円強の残額が生じてしまった。次年度端数については合わせて執行する。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件) 学会発表 (11件)
Journal of Organometallic Chemistry
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