研究課題/領域番号 |
22K05126
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
大津 英揮 富山大学, 学術研究部理学系, 准教授 (80433697)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 金属錯体 / 有機ヒドリド / NAD / 光物質変換反応 / CO2還元 |
研究実績の概要 |
唯一無二の持続可能なエネルギー源である太陽光エネルギーの効率的利用術や地球温暖化の主因の1つである二酸化炭素(CO2)の排出削減・化学的変換・利用技術の創成は、人類の存続を賭けた最重要課題となっている。本研究「有機ヒドリド錯体が拓く犠牲試薬フリーな光化学的二酸化炭素多電子還元反応」では、我々のこれまでの生体内における補酵素NAD(Nicotinamide Adenine Dinucleotide)のNAD+/NADH型レドックス機能を範とした独創的研究をさらに進化・発展させ、犠牲試薬を使用せず、有用な物質変換反応を伴った、光エネルギーを化学的に(有機ヒドリドとして)貯蔵できる新しい金属錯体を開発し、光エネルギーにより錯体内に貯蔵した有機ヒドリドのヒドリド供与能を自在・精密に制御することによる、光エネルギーを駆動力としたCO2の選択的・多電子還元反応の達成、を目的としている。本年度(令和4年度)では、電子求引基であるクロロ基を有する新しいNAD+型配位子であるCl-pnを持つZn錯体を合成・単離することができ、X線結晶構造解析にも成功した。他の電子供与基であるメチル基を有するNAD+型配位子(Me-pn)や置換基のないNAD+型配位子(pn)を持つZn錯体に関しても合成・単離することができた。さらに、2-プロパノールを含むZn錯体のアセトニトリル溶液に350nm以降の光照射することで吸収スペクトル変化するという測定結果が得られたことから、これらZn錯体によるアルコールの光酸化反応(光エネルギーの有機ヒドリド貯蔵反応)の進行が十分期待できる知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規なNAD+型配位子であるCl-pnや電子供与性・電子求引性置換基を系統的に導入したNAD+型配位子を持つ様々なZn錯体の合成・単離に成功しており、これらZn錯体のX線結晶構造解析をはじめ、アルコールの光酸化反応が進行することを示唆する結果も得られていることより、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
様々なNAD+型Zn錯体([Zn(R-pn)2]2+、R = Cl, H, CH3)の各種分光学・光化学的性質や電気化学的特性、および、アルコール光酸化反応特性の比較・検討を詳細に行い、アルコールを対応するアルデヒド・ケトンへと(水を酸素・過酸化水素へと)酸化し、高付加価値物質を産み出す有用な分子変換を伴った光駆動有機ヒドリド貯蔵反応(NAD+型錯体からNADH型錯体への変換反応)の開発と反応メカニズムの解明に取り組む。また、有機ヒドリドを貯蔵したNADH型R-pnHH配位子(R = Cl, H, CH3)を持つZn錯体([Zn(R-pnHH)2]2+)の単離・合成と物性の解明や置換基効果によるCO2ヒドリド還元反応特性の評価・比較を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を遂行する上で必要な研究経費を執行する際、試薬・実験用器具を精査して購入するなど、研究経費のより効率的な使用に努めた結果、金額としては1万円以下ではあったが、次年度使用額に差が生じ、未使用額が発生した。 配位子・金属錯体を合成するための試薬やガラス器具購入費に充て、本研究を当初の予定以上に進め、加速度的に発展させるべく、有効に使用する。
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