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2022 年度 実施状況報告書

細胞膜空間を利用した触媒反応システムの創製

研究課題

研究課題/領域番号 22K05133
研究機関立命館大学

研究代表者

越山 友美  立命館大学, 生命科学部, 准教授 (30467279)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード細胞膜 / 触媒反応 / 機能性分子
研究実績の概要

本研究では、細胞膜である赤血球膜への機能性分子の空間配置と触媒反応システムの反応機構解明により、細胞膜空間を反応容器として利用するための分子設計指針の確立を進めた。近年、高活性、高機能な多種多様な機能性分子が開発されている。しかし、単独分子による機能には限りがあることから、それらを複合化し、異なる化学反応が連動したより高度な触媒反応システムの創製が求められている。各々の化学反応に関与する種々の機能性分子を集積化するための空間が必須であり、機能性分子を集積化する場としてリポソームなどの球状人工膜空間は有用であるものの、対称膜であるため分子配向や配置の制御が難しい。本研究では、「網目状蛋白質ネットワーク」と「脂質膜」からなる非対称な赤血球膜構造を利用することで機能性分子を階層的に集積化し、① エネルギー移動反応、② 電子移動反応、および ③ 触媒反応が連動した触媒反応システムの構築を目指す。本年度は (1) 赤血球膜への機能性分子の空間配置制御法の探索、(2) 光誘起エネルギー移動反応の制御、(3) 光触媒反応システムの反応評価を進めた。(1) では網目状蛋白質ネットワークへの異なる機能性分子の修飾、(2)では網目状蛋白質ネットワークに修飾した二種類の蛍光分子間の光誘起エネルギー移動反応の評価、(3)では光増感剤、電子メディエーターと触媒を赤血球膜に集積化することで光水素発生反応を検討した。これらの結果より、赤血球膜が化学反応を制御する反応容器として有用であることがわかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画では、赤血球膜への機能性分子の空間配置制御法の確立を初年度に進める予定であったが、それに加えて、光誘起エネルギー移動反応と光水素発生反応の検討まで進めることができた。(1)の赤血球膜への機能性分子の空間配置制御法の探索では、網目状蛋白質ネットワークのリシン残基とシステイン残基への機能性分子の化学修飾、および、網目状蛋白質ネットワークを足場としたナノ粒子合成を進めた。修飾・合成時の各々の機能性分子の添加量、温度、反応時間、pH等を変化させることで、修飾・合成条件の最適化を進めた。(2)の光誘起エネルギー移動反応の評価では、(1)の手法を用いて、網目状蛋白質ネットワークのリシン残基とシステイン残基へ異なる蛍光分子を化学修飾した赤血球膜を作製し、蛍光分子の修飾量や比率などによりエネルギー移動効率が変化することを確認した。さらに、(3)の光触媒反応システムの反応評価では、(1)の手法を用いて、網目状蛋白質ネットワークのリシン残基にRu(bpy)3錯体を化学修飾し、さらに、網目状蛋白質ネットワーク上に白金ナノ粒子を固定化した赤血球膜を作製した。そこに電子伝達体と犠牲還元試薬を添加し光を照射すると水素が発生することを確認した。以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると考える。

今後の研究の推進方策

今後は、本年度検討した光誘起エネルギー移動反応と光水素発生反応に関して、より詳細な反応機構の解明を進める。例えば、光誘起エネルギー移動反応の解析では、定常蛍光スペクトル測定による蛍光強度の変化と蛍光寿命測定によりエネルギー移動効率と反応経路を解析する。また、光水素発生反応の解析では、水素発生量の時間追跡や反応途中の溶液の分光測定を行うことで、反応の律速段階や失活過程などの反応機構を明らかとし、分子の導入量や溶液のpHなどの反応条件の最適化を図る。さらに、赤血球膜の網目状蛋白質ネットワークへの光増感剤である亜鉛ポルフィリンと電子メディエーターであるメチルビオロゲンの部位特異的な化学修飾、エネルギー供与体である BODIPY の膜中への導入、および水素発生触媒である白金コロイドの内包した光水素発生システムの構築も進める予定である。

次年度使用額が生じた理由

当初、赤血球膜の単離精製に必須の装置である冷却遠心機の購入を予定していたが、単離精製の改善により赤血球膜の収量が向上したことから、冷却遠心機の購入を取りやめた。次年度は、反応過程の分光学的解析が重要であるため、それらの測定に必要な備品・消耗品等を購入し測定環境を充実させていく。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Peptide modification on the interior surface of red blood cell ghosts for construction of catalytic reactors2022

    • 著者名/発表者名
      Matsumoto Honoka、Okuichi Kentaro、Imamura Hiroshi、Yasuhara Kazuma、Kato Minoru、Koshiyama Tomomi
    • 雑誌名

      Chemical Communications

      巻: 58 ページ: 12220~12223

    • DOI

      10.1039/d2cc05013g

    • 査読あり
  • [学会発表] ゴースト赤血球を利用した光水素生成システムの構築2023

    • 著者名/発表者名
      坂本大芽・越山友美
    • 学会等名
      日本化学会第103春季年会 (2023)
  • [学会発表] Fabrication of Functional Composites Using Lipid Vesicles2022

    • 著者名/発表者名
      Tomomi Koshiyama
    • 学会等名
      10th Asian Biological Inorganic Chemistry Conference (AsBIC10)
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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