研究課題/領域番号 |
22K05149
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
北川 文彦 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (20362452)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | エレクトロスプレー / ナノ微粒子 / 電気泳動 / オンライン試料濃縮 / ゼータ電位 |
研究実績の概要 |
ナノ微粒子(NP)に対するエレクトロスプレー(ES)試料前処理において,シースレス型からシースガス導入型に改良することでNPのゼータ電位を向上することが明らかとなっていたが,市販のシリンジ針を用いたため,針先端が鋭角すぎて,過度な溶媒蒸発に伴うNPの凝集が問題となっていた。そこで適度な先端を有するスプレイヤーの作製を目指し,酸性条件でステンレス製シリンジ針を電解研磨することで,穏やかな先端角を有するスプレイヤーに加工することができた。この電解研磨針を基にシースガス導入型ES前処理装置を作製し,ES前処理前後におけるシリカNPのゼータ電位を測定したところ,ES処理前は+3mVであったのに対し,+20kVのES電圧を印加するとゼータ電位は+30mVまでに上昇した。このようにES前処理したNPをオンライン試料濃縮することで高感度な電気泳動分析が実現できるものと期待される。 前年までにPA-LVSEP-FASI法の改良を目指し,tITPの原理も組み合わせたPA-LDIS-FASI法について検討を行い,標準色素試料の濃縮率は9500倍から58500倍までに向上された。このPA-LDIS-FASI法をさらに高性能なオンライン試料濃縮法とするために本年は,FASIによる濃縮時間の効果について検討を行った。その結果,FASI濃縮時間を0秒から90秒に増加させると濃縮率は10100倍から87500倍までに向上することがわかった。そこでシリカNPの分析に応用したところ,FASI濃縮時間30秒で12700倍の高感度化を達成した。さらなる高感度化を目指し,泳動液に分子量22000のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を1%添加したところ,NPの濃縮率は64100倍までに向上した。今後,HPMCの分子ふるい効果を利用したNPのサイズ分離について検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施計画に記載したエレクトロスプレー試料前処理法の確立,ならびにPA-LVSEP-FASI法を改良したPA-LDIS-FASI法の開発のいずれも順調に進展しているため
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り,エレクトロスプレー試料前処理法の確立ならびにPA-LDIS-FASIとNACGE-グラジエント溶離の結合を目指して研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
測定装置の故障が発生し,当初は修理が不能なために購入を予定して,その分の経費を残しておいたのだが,年度末間際になってから当該装置の修理が可能となったことから,その分の経費が残額として発生してしまった。この残額は翌年度に主に当該装置で必要な消耗品費に充てる予定である。
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