研究課題/領域番号 |
22K05151
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
勝田 正一 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (40277273)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 溶媒抽出 / 高精度主成分分析法 / カリウム / ナトリウム / クラウンエーテル |
研究実績の概要 |
申請者が考案した“抽出分離法を利用する金属塩の高精度主成分分析法”を高純度塩化カリウム中のカリウムの分析に適用するために諸条件を検討した。カリウムイオン用ニュートラルキャリアとして 18-クラウン-6,対陰イオンとしてピクリン酸イオン,抽出溶媒としてジクロロメタンを用いた。ピクリン酸水溶液の濃度を中和滴定で高精度に決定するために,電位差(pH)測定を利用する重量滴定を行った。最適化された条件により,塩化カリウム中のカリウムを有効数字4桁の精度で求めることができた。 また,本法を今後ナトリウムの分析へ展開するためには,安価で高選択的なナトリウムイオン用ニュートラルキャリアが必要であるが,現時点では適切なものがない。そこで,ナトリウムイオン用ニュートラルキャリアの新規開発を目指し,ケイ素架橋型ビス(クラウンエーテル)の合成を行った。目的化合物は比較的安価な市販試薬を原料として1段階の合成で容易かつ高収率に得ることができた。分子内のアルキル側鎖が異なる数種の化合物を合成し,アルカリ金属ピクリン酸塩に対する抽出能を調べた結果,いくつかの化合物はナトリウムイオンに対して高い抽出選択能を示した。その選択能は市販のナトリウムイオン用ニュートラルキャリアであるビス[(12-クラウン-4)メチル]-2-ドデシル-2-メチルマロネートと同等以上であった。さらに,この化合物はナトリウムイオンセンサーの感応物質としても有用であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
塩化カリウム中のカリウムの分析に関して,本法の精度(併行精度)的な有効性を確認することができ,当初の目的を達成できる見通しが立った。ただし,真度および再現精度についてはさらに検討の余地があり,異なる試料・異なる測定者による分析結果を集める必要がある。 新規ナトリウムイオン用ニュートラルキャリアの合成と性能評価は順調に進んでおり,特許を出願中である。
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今後の研究の推進方策 |
(1) カリウムの分析について,標準物質を用いて本法の真度・精度を評価する。 (2) 新規合成したクラウンエーテルのナトリウムイオン抽出選択性およびイオンセンサー用感応物質としての応答選択性について,アルキル側鎖の構造の影響を詳しく調べる。 (3) ナトリウムイオン以外のアルカリ金属イオンに選択的な新規クラウン化合物を合成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)2022年度は備品としてメトラー・トレド社製の高性能分析用天びんを購入する予定であった。しかし,海外情勢により製品の納期が未定となった。そのため,研究の進捗を考慮し,早期納入が可能であった別メーカー(オーハウス社製)の比較的安価な分析用天びんに変更した。また,新規合成したクラウン化合物について本学から特許出願することになったため,関係する研究成果の公表を控えた。結果として,当初予定していた学会発表・論文発表に関わる旅費・投稿料等は発生しなかった。 2023年度は,学会発表や論文発表を行う予定であり,旅費やその他の経費が必要になる。また,電気・ガス等の光熱費高騰の影響で,大学からの運営費交付金が一層削減される見込みであることから,2022年度に交付された助成金額の一部を2023年度に繰り越すこととした。
(使用計画)本研究の遂行に必要な試薬類(高純度塩,クラウンエーテルおよびその原料,溶媒等)と器具類(ガラス器具,テフロン製器具等)の購入に約90万円,学会旅費に約30万円,その他(NMR,MS,ICP等の共用機器使用料,論文投稿料,学会参加登録料)に約30万円を充てる予定である。
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