研究課題/領域番号 |
22K05154
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
安達 健太 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (80535245)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | フォトクロミズム / アルブミン / アミノ酸 / ナノ粒子 / センシング / 比色分析 / 吸着 / 分析化学 |
研究実績の概要 |
本年度(令和四年度)は、アルブミン化合物吸着に伴う酸化タングステン(WO3)表面増強フォトクロミズム、及びアルブミンに選択的に結合する色素化合物に関する基礎的研究を推進した。具体的実施内容と成果は以下の通り。 (1)アルブミン化合物吸着に適したWO3ナノコロイド粒子の合成技術の確立 半導体ナノ粒子は、フォトクロミズムをはじめとして光学特性が粒子径に大きく依存する(量子サイズ効果)。よって、サイズ・形状の揃ったWO3ナノコロイド粒子の作成は、アミノ酸を高感度にセンシングするうえで極めて重要である。これまでに確立してきたWO3ナノコロイド粒子合成技術に、水熱合成技術を掛け合わせ合成の最適化に努めた。様々なサイズ・形状を有する三酸化タングステン・水和物(WO3・2H2O、WO3・H2O、WO3・0.33H2O)ナノコロイド粒子の合成に成功した。アルブミン化合物存在下、WO3ナノコロイド粒子のフォトクロミズム増強を確認したが、その結果は再現性の乏しいものであり、定量的な評価には至らなかった。アルブミン化合物の自己凝集に伴って、吸着挙動を安定しないことに原因があると考察している。来年度以降の重要再検討課題である。 (2)アルブミン化合物に選択的結合する色素化合物の合成 本年度は、細胞染色など実績のあるキサンテン系色素に着目し、種々色素化合物の合成を試みた。合成した色素化合物とヒト血清アルブミン(HSA)との結合実験から定量的評価(結合サイト、結合定数)を行った。結果、HSAのサイト1に選択的包接結合する色素化合物を見出すことができた。変性アルブミンと未変性アルブミンには、有機化合物を包接するサイトの包接能力に大きな違いがあることが知られている。よって、この結果は変性・未変性アルブミンを個々に検出・定量するうえで極めて重要な知見である。来年度以降も、クルクミノイド色素をはじめとした種々色素化合物の検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アルブミン化合物に対してセンシング能を有する種々WO3ナノコロイド粒子の合成、そして評価技術を確立し、アルブミン化合物に結合する種々色素化合物の合成を行った。 WO3ナノコロイド粒子へのアルブミン化合物吸着に伴う、フォトクロミズム増強の確認はされたが、粒子表面に吸着したアルブミン化合物の量を定量的に評価できていないため、実験計画の再スケジューリングが必要と考えている。 種々キサンテン系色素化合物の合成を行ない、ヒト血清アルブミン(HSA)のサイト1に選択的包接結合する色素化合物を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度(令和五年度)は、WO3ナノコロイド粒子表面に吸着したアルブミン化合物を定量的に評価、ならびに、更なるアルブミン化合物高感度センシング能を指向し、高周波超音波照射技術を用いた新規WO3ナノコロイド粒子合成法の開発に着手する。また、水溶液中におけるアルブミン化合物の自己集合挙動についても定量的に評価するため、ハイスループット計測可能な測定系を構築する。 今年度に引き続き、アルブミン化合物に選択的結合する新規色素化合物の合成・評価も継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
【理由】当初計画していた「光学分光計測装置(WO3コロイド粒子/アルブミン化合物との相互作用挙動をその場で測定するため)」設計に関して進捗が遅れている。また、世界的な半導体不足に影響を受け、実験にて使用する予定であった高圧電源装置、それらの関連物品(合わせて約50万円)の年度内納品には至らなかった。
【使用計画】上記「光学分光計測装置」設計・構築を達成すべく、高圧電源装置、それらの関連物品(合計50万円)を購入する。また、WO3コロイド粒子合成、及びWO3ナノコロイド粒子と種々タンパク質化合物との相互作用の評価に使用する試薬・ガラス器具として消耗品類(80万円)を計上する。
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