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2023 年度 実施状況報告書

共振器を用いたテラヘルツ時間領域分光システムの開発

研究課題

研究課題/領域番号 22K05157
研究機関大阪公立大学

研究代表者

菜嶋 茂喜  大阪公立大学, 大学院工学研究科, 講師 (90347485)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードテラヘルツ波 / テラヘルツ時間領域分光法 / エンハンスメント共振器 / 共振器分光 / キャビティエンハンスト吸収分光法(CAS) / キャビティリングダウン分光法(CRD) / 分光センシング / フェムト秒レーザー
研究実績の概要

指紋スペクトルが存在するテラヘルツ波(THz波)領域は,基礎物性の研究だけでなく,分光センシングなどの応用も期待されている.従来のTHz時間領域分光(THz-TDS)では,十分な光学的厚さを有する試料には高精度な測定が可能であったが,微量な物質や吸収率の小さい物質の応答を得るのが困難であり,相互作用長の増大が課題である.この技術課題に対し本研究では,キャビティリングダウン分光法(CRD)などに代表される共振器分光技術を導入して相互作用を増大し高感度化を目指している.
2年目のR05年度では,1年目に試作したTHz波用の非球面レンズとファイバーから成る外部結合器を用いてTHz波用のウィスパリングギャラリーモード(WGM)共振器との結合法を試みた.THz-TDSでの測定の結果,樹脂で作製した外部結合器にWGM共振器を接近させた時に限り,時間遅延した領域にTHz波パルスの波形を確認した.樹脂製THzファイバーを用いたWGM共振器からの周回波の測定は初めてである.是迄の取り組みでは,時間領域で観測できたTHz波パルスは数周回であり,全反射減衰(ATR)ATRプリズム結合器の結果に及んでいないが,ファイバーの断面形状などの構造設計によりエバネッセント場を制御することで結合条件の向上が考えられ,FDTD法による電磁界計算による結合条件の検討に取り組んでいる.
一方で,チューブ型のWGM共振器を用いた方法について試行実験を行った.チューブ型WGM共振器はチューブ内を流れる危険ガスなどの対象物の検知を目的としている.市販品で入手できた最も細いPP製チューブ(外径3.0 mm,内径1.0mm)を用いた実験では,約46 psの周期でWGM共振器を周回するTHz波の測定に成功した.しかしながら,チューブ内の物質を検知するまでには至っておらず,管厚や入射条件などの最適化が必要であることがわかった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2年目のR05年度は,本研究の遂行に欠かせない主たるレーザー装置の不調があり,光学的な実験は順調には進まなかった.また,大学の方針で年度末にキャンパス移転を行った為,それに伴う実験停止,実験系の解体,移設準備を余儀なくし,研究を停止せざるをえなかった.以上の理由からR05年度の進捗状況としては(3)であると考える.ただし,1年目を含む全体としては,実証を含む研究成果も得られ,その成果が優秀発表賞などで評価されていることから,(2)を選択した.

今後の研究の推進方策

3年目のR06年度は,キャンパス移転後の実験体制の復旧が最優先事項であると考えている.電磁界計算など復旧の早いものから取りかかり,2年目までの実験結果から浮上した課題(ファイバー径などの構造による近接場と群遅延分散の設計やチューブの管厚などの構造パラメーター依存性,そして,高抵抗シリコンを想定したWGM共振器の検討)について検討を開始する.実験系ではTHz-TDSを実施する体制が整い次第,計算から見出した条件を実施し,評価を行う予定である.

次年度使用額が生じた理由

2年目のR05年度に実験装置(レーザー装置)の購入を計画したが,物価高に伴って購入計画を見直す必要があったのと,キャンパス移転を控えているという特殊事情などから,総合して次年度のR06年度に購入することに変更した.

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公開日: 2024-12-25  

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