研究課題/領域番号 |
22K05167
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
川上 淳 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (60261426)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 蛍光分析試薬 / 凝集誘起発光 / 蛍光共鳴エネルギー移動 / メカノクロミック発光 / 蛍光性トリプタンスリン / シクロパラフェニレン |
研究実績の概要 |
蛍光分析試薬は,様々な分野で簡便で汎用性が高い分析ツールとして,必要不可欠なものになっている。しかし,従来の蛍光分析試薬で用いられる有機蛍光色 素の多くは平面構造のため,希薄溶液中では強い蛍光を示すが,凝集状態である高濃度溶液中では分子がぴたりと積み重なった集積構造をとることで,凝集起因消光(ACQ)が起り,検出感度や定量性が著しく低下するという欠点がある。 本研究では,分子内に回転運動が可能な嵩高い置換基を導入することで,希薄溶液中では熱放射を伴う無輻射過程が勝り蛍光を示さないが,高濃度溶液中では 回転運動の抑制と立体的に集積構造が取れないことで蛍光を発する凝集誘起発光(AIE)という新しい方法論を基軸とし,AIEと蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の融合とAIE色素のメカノクロミック発光(MCL)とFRETを融合した新規分子・イオン及び圧力応答性の蛍光分析試薬を創製し,次世代圧力センサーなどの高感度蛍光分析試薬への展開をはかる。 2023年度は,2022年度の引き続き,当研究室で見出した優れた吸収・発光特性を有するトリプタンスリンの2-位に電子供与性置換基を導入した蛍光性トリプタンスリンを基本骨格とする幾つかのモデル分子を合成し,AIEや固体発光,MCL特性を明らかにした。具体的には,2-(4-(N,N-ジフェニルアミノ)フェニル)トリプタンスリンの9-位にピレンを導入した分子内FRETが起こる系や,2-(4-(N,N-ジフェニルアミノ)フェニル)トリプタンスリンと[10]シクロパラフェニレンとの分子間FRETについて,幾つかの知見を得た。 また,得られた知見の一部については,査読付き学術論文誌への投稿し,掲載された(J. Jpn. Soc. Colour Mater, 96 (10), 333-337 (2023))。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
幾つかのモデル分子の合成に成功しており,それらの凝集誘起発光(AIE)や固体発光,メカノクロミック発光(MCL)特性,例えば,2-(4-(N,N-ジフェニルアミノ)フェニル)トリプタンスリンの9-位にピレンを導入した分子内FRETや,2-(4-(N,N-ジフェニルアミノ)フェニル)トリプタンスリンと[10]シクロパラフェニレンとの分子間FRETについて興味ある知見を得ている。 また,得られた知見の一部については,査読付き学術論文誌への投稿し,掲載されている(J. Jpn. Soc. Colour Mater, 96 (10), 333-337 (2023))。よって,おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
更に幾つかのモデル分子を合成し,凝集誘起発光(AIE)や固体発光,メカノクロミック発光(MCL)特性,分子内及び分子間蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)につ いて調べ,分子やイオン,及び圧力に対する蛍光応答性を明らかにし,新規蛍光分析試薬の創製を目指す。また,未発表の得られた知見が幾つかあるため,論文発表にも力を入れたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)物品の調達方法の工夫や所属機関の校費利用などにより,当初計画よりも経費の使用が節約できたため。 (使用計画)過度に節約することなく,研究遂行のために適切に使用する計画である。
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