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2022 年度 実施状況報告書

ナノ空間での高収率物質変換に基づく呼気計測技術の開発

研究課題

研究課題/領域番号 22K05168
研究機関茨城大学

研究代表者

山口 央  茨城大学, 理工学研究科(理学野), 教授 (10359531)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードナノポーラス / 呼気センサー
研究実績の概要

呼気は採取容易な非侵襲試料であり,揮発性バイオマーカー(VBM),呼気エアロゾルに含まれる不揮発性バイオマーカー(N-VBM)をターゲットとしたバイオセンサー開発が進められている。呼気センサー開発では,呼気試料を迅速かつ簡便に捕集するための方法論,呼気中微量成分を高選択かつ高感度に計測する方法論が主要な開発項目である。本研究の目的は,『ナノ空間での高収率酵素反応と電気信号変換』に立脚した設計から,上記要求を解決する呼気センサー要素技術を開発することである。具体的な研究課題は①VBM計測系の開拓と実証,②N-VBM計測系の開拓と実証,③センサー部位の集積化と高度化であり,本年度は①と②について遂行した。①については,ナノホール電極における気液界面形成,ホルムアルデヒドをモデルVBMとした実証実験を行った。さらに,気体中ホルムアルデヒド濃度を正確に制御するフローシステムを自作し,試作したセンサーの検出感度についても検討を進めた。②についてはGOD封入メソポーラスシリカを用いたグルコースの簡易計測について実証した。酵素封入においては,メソポーラスシリカ細孔に対する酵素や基質の吸着状態を明らかとする必要がある。そのために,ミオグロビンをモデル酵素としたメソポーラスシリカ吸着分布に及ぼす細孔サイズの影響,カチオン性分子のメソポーラスシリカ吸着に関する温度の影響についても明らかとした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は,以下の研究課題を遂行した。
①VBM計測系の開拓と実証:アルキルシランで疎水化した陽極酸化アルミナ膜(PAA膜:開口率40%,ナノチャンネル径200 nm)に白金のナノホール電極を形成することで,ナノ気液界面が形成することを確認した。また,ホルムアルデヒドをモデルVBMとして,ナノ気液界面における電気化学計測が可能であることを実証した。そこで,気体中ホルムアルデヒド濃度を制御する装置を自作し,定量下限(目標値:1 ppb)についての検討を行ったが,現状では目標の定量下限が達成されていない。白金電極上におけるホルムアルデヒドの電気化学反応に最適な溶液条件の模索を現段階では行い,ホルムアルデヒドの高感度検出へ向けた検討を進めている。
②N-VBM計測系の開拓と実証:上記のPAA膜に白金ナノホール電極を形成した計測部,グルコースオキシダーゼ(GOD)封入メソポーラスシリカを酵素反応部としたセンサーを自作し,溶液系でのグルコース計測を行った。その結果,10 μM程度の検出下限を持つセンサーとなることを実証した。今後,このセンサーを呼気中エアロゾルのグルコース計測に展開する予定である。また,酵素封入においては,メソポーラスシリカ細孔に対する酵素や基質の吸着状態を明らかとする必要がある。そのために,ミオグロビンをモデル酵素としたメソポーラスシリカ吸着分布に及ぼす細孔サイズの影響,カチオン性分子のメソポーラスシリカ吸着に関する温度の影響についても明らかとした。

今後の研究の推進方策

3つの研究課題について,今後の方策は以下の通りである。
①VBM計測系の開拓と実証:白金電極上におけるホルムアルデヒドの電気化学反応に最適な溶液条件の模索を現段階では行い,ホルムアルデヒドの高感度検出へ向けた検討を行い,目標である定量下限(1 ppb)の達成を図る。その後,酵素の基質選択制を利用したVBM計測法の開発を展開していく。
②N-VBM計測系の開拓と実証:センサーのプロトコルは概ね完成している。今後は,呼気中エアロゾルのグルコース計測に展開するため,ネブライザーなどをエアロゾル発生源としたフローシステムを自作し,グルコースをモデルとした計測の実証を展開していく。また,本研究課題の遂行においてはメソポーラスシリカ細孔内における酵素の構造・機能を明らかとすることも必要である。令和4年度までの研究成果を発展させ,中性子などを利用したダイナミクス解析を行っていく予定である。
③センサー部位の集積化と高度化:上記の要素技術開発を達成した後,多成分計測へ向けたセンサー部位の集積化について検討する。呼気成分の定量解析では,センサー応答と呼気量の相関が重要である。そのためには,センサー部位に吹き付けられる呼気量の制御・計測をセンサー部位に追加する必要がある。本研究内では,要素技術開発で得られた知見を基に,集積化と高感度化に関する設計を進める。

次年度使用額が生じた理由

概ね研究計画に沿って研究費を使用してきたが,3133円の残額が生じた。本研究で使用する物品価格(膜の合成に必要な桐山ロート濾紙:3762円)より少額のため,次年度に繰り越し,次年度の研究費と合算して当該物品の購入を行う。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] ANSTO(オーストラリア)

    • 国名
      オーストラリア
    • 外国機関名
      ANSTO
  • [雑誌論文] Integration of enzyme-encapsulated mesoporous silica between nanohole array electrode and hydrogel film for flow-type electrochemical biosensor2023

    • 著者名/発表者名
      Daiki Inaba, Akira YAMAGUCHI
    • 雑誌名

      Anal. Sci.

      巻: 39 ページ: 153-161

    • DOI

      10.1007/s44211-022-00209-0

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Protein Condensation at Nanopore Entrances as Studied by Differential Scanning Calorimetry and Small-Angle Neutron Scattering2022

    • 著者名/発表者名
      Mami Aizawa, Hiroki, Iwase, Toshio Kamijo, Akira Yaamguchi
    • 雑誌名

      J. Phys. Chem. Lett.

      巻: 13 ページ: 8684-8691

    • DOI

      10.1021/acs.jpclett.2c01708

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Influence of ionic strength and temperature on adsorption of tetrakis-N-methylpyridyl porphyrin onto mesoporous silica2022

    • 著者名/発表者名
      Akira Yamaguchi, Ami Ishii, Toshio Kamijo
    • 雑誌名

      Colloid Surf. A

      巻: 655 ページ: 130262

    • DOI

      10.1016/j.colsurfa.2022.130262

    • 査読あり
  • [学会発表] ナノホール電極での気液界面形成と電気化学ガスセンシング応用2022

    • 著者名/発表者名
      仲田遥香,山口央
    • 学会等名
      日本分析化学会第71年会
  • [備考] 茨城大学山口研究室

    • URL

      http://anal.sci.ibaraki.ac.jp/ibatop.html

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公開日: 2023-12-25  

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