研究課題/領域番号 |
22K05172
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
水口 仁志 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 准教授 (30333991)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | トラックエッチドメンブレン / バイオセンサ / 酵素 / 電極触媒 / 生体関連物質 / グルコース |
研究実績の概要 |
本研究は,非酵素型の微粒子触媒とトラックエッチ膜フィルター電極システムを組み合わせて,安価で長期安定性に優れ,かつ分析対象となる物質に対する選択性を有するバイオセンサの開発を目的としている。本年度は,窒素ドープグラフェン量子ドットとタングステン酸ニッケルのコンポジット材料で修飾したトラックエッチ膜フィルター電極(TEME)と共存物質の分解用TEMEを組み合わせたフローセンサを開発し,グルコースの選択的かつ高感度な検出を目指した。この材料はサブマイクロメートルサイズの微粒子状物質であるが,水に分散させた状態でTEMEに通すだけで,目詰まりを起こすことなく電極表面に積層させることができる。作製した修飾電極は,微アルカリ性条件においてグルコースに対して明確にアノード応答を示した。フローインジェクション方式で当該センサの分析性能を調査したところ,グルコースの濃度とセンサの応答との関が原点を通る直線となることが確認された。グルコースの電気化学検出における主な妨害物質はアスコルビン酸と尿酸である。上記の修飾電極はこれらのいずれの物質にも応答を示す。この場合,例えばグルコースが0.02mMに対して0.01mMの尿酸が共存すると回収率は7000%以上となって著しい妨害となる。そこで本研究では,妨害物質を分解するためのTEMEをグルコース検出用の修飾電極の上流に配置した。すなわち妨害物質を分解しつつグルコースを検出するという設計である。これにより,例えば上記の妨害は,回収率として110%まで軽減できることが示され,グルコースに対する選択性が大幅に向上することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で提案する非酵素型バイオセンサの基本的なアイディアは,前年度における尿酸センサの開発を通して実証できている。本年度は,当該センサのさらなる応用展開としてグルコースセンサの開発を行い,その動作と基本的な性能を確認することができており,当初計画の通りに順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
グルコースセンサに関しては,飲料や生体試料などの実際の試料への適用について検討し,その有用性を示す予定である。また,電極触媒として機能する難溶性塩,金属酸化物等の微粒子を用いて,様々な分析対象物質へ適用範囲を広げる計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 本年度は,学会発表に伴う旅費支出はほぼ当初計画通りであったが,物品費において本年度の研究に必要な材料の調達が予定よりも少額で賄うことができたため次年度使用額が生じた。 (使用計画) 令和6年度は,フロー電解セルの改良と触媒合成ならびに成果発表に多く必要になることが予想されるため,前年度残額と消耗品の購入および学会発表旅費として使用する計画である。
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