研究課題/領域番号 |
22K05181
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
朱 彦北 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 上級主任研究員 (90422790)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | ICP-QMS/QMS / オゾン / リアクション / スペクトル干渉 |
研究実績の概要 |
誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)による元素分析に際して、酸素リアクションセル技術によって、目的元素のイオンM+をその酸化物イオンMO+に変化させること(マスシフト)によって、M+と同じ質量電荷比(m/z)を持つ干渉物イオンとの分離に有効であるが、多くの元素(Mn・Cu・Zn・Cdなど)について「M++O2→MO++O」は吸熱反応であるため、MO+の生成率は低く分析感度が顕著に低下する。本研究は酸素の代わりにオゾンをリアクションガスとして用いることによって、主な酸化物イオンの生成反応は「M++O2→MO++O」から「M++O3→MO++O2」に変わり、MO+の生成率を向上させて、多くの元素について分析感度の大幅な向上(数倍~数十倍)を目指している。 市販オゾン発生器を用いて、オンラインに発生させたオゾン濃度の原料酸素ガス流量依存性を調べ、最も高いオゾン濃度且つその長時間安定性を確保できる実験条件を確立した。前記確立した実験条件で発生させたオゾンガスをタンデム四重極型誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-QMS/QMS)のセルガスとして活用し、周期表に安定同位体を持つ主な化学元素についてオゾンとの反応特性を調べた。結果として、酸素とオゾンをリアクションガスとした各元素の酸化物生成率比とマスシフトモード「M+→MO+」測定における信号強度比の比較から、酸素とオゾンをリアクションガスとして用いた場合、P・S・Ti・Vなど半数ほどの元素の酸化物生成率比と信号強度比は1付近であり、堅調な差が見られなかった。 一方、酸素に比べ、オゾンをリアクションガスとして用いた場合、Na・Mg・Alなど19元素の酸化物生成率と25元素の信号強度が3倍以上になった。このうち、Ga・Cd・Pbなど11元素の酸化物生成率と12元素の信号強度が5倍以上になった。これらの元素について、マスシフトモードにおける分析感度の向上が期待できる。 これらの結果に基づいて、誌上発表1報および口頭発表2報を遂行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
想定していたオゾンガスの高い濃度且つ長時間安定性がえられ、ICP-QMS/QMSのセルガスとしての有効性が確認できた。今後はデータの蓄積と共に成果発表を中心に取り組んでいく予定。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは、周期表中の化学元素を包括的にオゾンとの反応特性の確認ができた。今後は、基礎研究として周期表中の族毎の元素の反応特性の比較および、元素分析の応用分野における分析現場の技術課題に合わせた応用研究を展開していく予定。また、研究成果の社会への還元として、成果発表と共に、分析装置用オゾン供給システムの製品化を目指す。
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